第3話

「いやいや。何かおかしくないか?」


「何が?」


 本当に気付いていない様子の浩行に、眉を寄せる。


 クリスマスから彼女がいないんだから、そろそろ女とヤりたくなってる頃だろ。


 ――それを、好みの女から声かけられたのに、断っただって?


 今までの浩行なら絶対、「連れがいるから丁度いい人数になる」と思った筈だ。


「……お前、熱あんのか?」


 悪い病気にでもかかったのかと、半分マジで思ってしまう。


 浩行の額に手をあてると、全然冷たかった。


「修の手、あったかいなー」


 呑気に言って、再び列に並ぶ。


「せっかく並んでたのに……」


 本当だったらあそこまで進んでる、と両手をポケットに入れたままアゴで元居た場所を示す。すると「まあまあ」と浩行が笑った。


「おわびに晩飯オゴるって」


「さっき昼飯外で食ったばっかじゃん」


「えー。せっかく外出て来たんだから、そこらウロつこうぜ」


「ウロつくのはいいけど、お前が作ったおせち残ってんじゃん。晩飯はそれでいいよ」


 浩行が、驚いたように俺を凝視する。


「んだよ?」


 怪訝に見返せば、目をしばたかせた。

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