第5話


 だから長続きしない。つまんないから、相手を振る。振られたのは相手でも、振った原因はこっちにあった。


 浩行は俺の話をするから相手に振られ、俺は自分の事を話す気にもならないから相手を振る。


「麻美に、電話しろよ」


 俺はテーブルに置かれた浩行の携帯に、視線を投げながら言った。


「へ? なんで?」


「要は麻美はヤキモチ妬いてるだけなんだろ? もう俺の話はしないし、麻美の方が大事だって言えば、機嫌も直るだろ」


「そんなのムリだよ」


 フッと笑いを零して浩行が言う。


「いいよ。お前の話をしただけで嫌われるんじゃ、どうせ長続きしないし。性格の不一致ってやつだ」


 カラカラと笑って、グラスを傾ける。笑いに呼応するように氷が揺れて、カラランと涼しげな音をたてた。


「そんな事言ってると、いつまでもフラれ続けるぞ」


「そうそう。丁度俺も怖くなってきてたとこなんだよ。このままじゃ『お1人様の老後』になっちゃうんじゃないかって」


「ヘタしたら、『お2人様の老後』だぞ。俺達」


 男2人。いつまでも同じ屋根の下、老人になってもずっと一緒に暮らしている。

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