第3話


 ソファへともたれなから、浩行は拗ねた口調で言った。


「なんで?」


「知らない」


 プイと顔を背ける。


「今日だってなー。あいつが見たいって言ってた映画観て、食事して、一体何が不満だって言うんだーッ!」


「へえ? 何観たの?」


「なんか……洋画だよ。恋愛もの。『運命のどうちゃら』とか言う…」


 ……どんな映画だよ。『運命のどうちゃら』って。


「また寝てたんだろ」


 呆れて言うと、「うん」とあっけらかんと頷いた。


「そこじゃない? フラれた理由は」


「ちっがう! 麻美はそこは寛大なの。笑って許してくれる」


「じゃあなんだよ?」


「だから、知らないってば」


 ぷぅと頬を膨らませる。フラれた理由が判らなければ、慰めてやる事も出来やしない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る