第2話


「当たり前だろ」


 お前の部屋の絨毯ならともかく、俺の部屋の絨毯なんだぞ。


 絨毯を叩くようにして拭いていると、ズリズリと浩行が腰を落としてくる。立てた膝に肘を付いて、俺を間近で見つめてきた。


「そんなだから、朋花にフラれんだろー。お前はー」


 そう言いながら、肩を小突いてくる。


「バカ言うな。俺はフッた側だよ」


 ぞうきんを持ち上げるついでに、浩行の肘を掴んで立ち上がらせる。リビングを通る時に、グダグダの浩行をソファへと座らせた。


 まだフラフラと立ち上がろうとする浩行に「立つな!」と洗面所に向かいながら言うと、「なんでだよー」と手足をバタつかせる。


「ガキか、お前は」


 そんなだから麻美にフラれんだろ、という言葉は心の中だけで突っ込んでおいた。


 また部屋に来られても困るので、急いで着替えてリビングへと戻る。


「なんでフラれたんだ?」


 麻美とは、結構うまくいっていた筈だ。俺が見る限り、どちらかと言うと麻美の方が浩行に熱をあげているように見えた。


 自分の分の缶ビールを持って、浩行の向かいのソファへと座る。


「つまんないんだってさ」

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