第10話


 友人達と、卒業証書と、1輪のカーネーションを持ったままバカ騒ぎして。その後の時間は過ごした。




 けれどその間、ずっと考えていた。





 彼女は、あれで自分への区切りとした。



 ――でも俺は?





 俺はどうやって、この想いに踏ん切りをつけるんだ?






 夜遅くに家に帰って。


 時計を見た俺は、「忘れ物」とすぐに家を飛び出した。




 人気のない高校の校門をよじ登って、校舎には入らずに中庭に向かう。


 1つだけ明かりがついている『あの部屋』を見上げた。





 腕時計を見れば、23時52分。




 もう、居ないと思ってた。


 もう、会えないと思ってた。




 なのに――。




「どうせ、個展に出す絵が完成してねぇんだろ」




 1人呟いて、笑う。



 けれど、あいつのそーゆういい加減な性格に、初めて感謝した。


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