第8話
自分で言った言葉どおり、俺があの部屋に行く事はなかったし。
当然あいつから、俺をあの部屋に呼び出してくる事もなかった。
だけど卒業までの間、美術の授業は普通に受けたし、廊下であいつと擦れ違う時も、今まで通りの反応と挨拶を交わした。
もし――。
同じ相手を想う者同士である上田と俺との違いがあるとすれば、そこだろうと思う。
キャーキャーとミーハーに友人達と騒ぐワケでもなかったが、上田の奥野に対する想いは真っ直ぐで、滲み出す想いが、周りにまで伝わってきていた。
だから奥野も、彼女に対しては人一倍気を遣い接していた。
心無い噂なんて、立つ事のないように……。
――あんな、ガサツなヤツでさえ。
彼女を傷付けたくはなかったのだろう。
俺は、2人の時以外は完全に『その他大勢の生徒』に徹していたから、奥野も気楽なモノだっただろうけど。
そして――。
俺達は挨拶以外の言葉は交わさぬままで。
卒業式を迎えた。
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