この空の下で、キミへ

第1話


 3月14日。




 屋上に出た俺は、一瞬自分が寝惚けてんのかと思った。


「…………は?」




 ――里見敬先輩。




 あれ?


 この人確か、卒業したんだよな? と自問する。


 制服ではなく私服でいるのだから、もうここの学生でなくなったのには、違いないようだ。


「……なんでここで寝てんの?」


 意味解んねぇ、と近付いて、幸せそうに熟睡している先輩の傍らに座り込む。


 風で揺れる、額にかかる前髪を、そっとどけてやった。


 こんな事ならコート持ってきてやればよかったなーと思う。


 私服で寝に来るって判ってたら、屋上そうじしといてやったのに。


 とか。


 そんなどーでもいい事を頭に浮かべながら、寝ている先輩の顔を眺めた。




 ――ずっと、眺めていてーなぁ。




 なんて、思ったけれど。


 風邪でもひかれたら夢見悪いし、そんなワケにもいかないので、起こす事にする。




「あのー、すみませーん。ここ、部外者は立ち入り禁止なんですけどォー」


 口の横に手を添えながら言ってやる。


 途端。


 ガバッと先輩が飛び起きた。


 ププッ、と笑ってる俺に気付いて、「っんだよー」と俺の頭を小突いて再びゴロンと横になる。


「なんでここに居るんスか」

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