第2話
「あー、アレだよ。今日ホワイトデーじゃん。和美にお返ししてきたトコなんだ。他にも何人かもらってたから、他の娘には郵送して……」
「なんスかそれ。――自慢?」
言いながら、密かにいっぱい貰っていたことにショックを受ける。
「まぁなー。俺、モテっからさ」
ニヤリと笑った先輩を軽く睨んで、ああ、和美さんには直接渡したんだな……と小さく笑った。
「ちゃんとお返しとかするんッスねー」
ちょっと意外ッス、と言うと、「なんでだよ」と軽くケリが入った。
「ちゃんとお返ししたぜー。和美には飴。マシュマロ渡そうと思ってたら、マシュマロ嫌い、とかアイツ言うんだぜー。ワガママだっつの。マシュマロ旨いのによー」
グチる先輩に、ハハッと笑う。
失恋した身としては複雑だが、やっぱり先輩の居る『この空間』は穏やかで、嬉しかった。
「――あ。あれッスか。俺にも何か買ってきてくれたんスか」
そんなのいいッスのにー、と続けようとしたのに、「いいや」とあっさり言われる。
「……………………」
――何しに来たんだよ、あんた。
軽く殺意が芽生えた処で、「え、なに。何か欲しかった?」と訊かれる。
「……いいえ。そう言やフランスでも、貰った女の方はお返ししなくてもよかったッスね、確か」
あんたは女じゃないケドな。
俺のスネた様子に、「アッハ」と先輩が笑った。
「お前にはコレ、やろうと思ってさ」
ピラッと、二つ折りの小さな紙を渡してくる。
「何スか?」
広げてみると、数字の羅列。
090 から始まってるから、ケイタイの番号のようだ。
「コレって……」
「そ。俺のケイタイの番号。――お前、知らなかったろ」
「ええ、まぁ……」
これからも遊んでくれるってコト?
「ヒマな時は電話していいってことッスか?」
「まぁな、そんな感じ」
寝転んだままの先輩が、頭の後ろで手を組み目を閉じた。
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