第7話


 檜山の努力の甲斐あって、英語は徐々に点数が良くなっていった。



 勝手に人の部屋に入ってテスト用紙を見つけた母親は、上がっている点数に満更でもない様子で「頑張ったじゃない」とどこまでも上から俺に言葉をかけてきた。


「今の時代、英語くらい出来ないと社会でやっていけないぞ」


 普段俺の事なんか気にも留めないくせに、こんな時ばかりしたり顔で母親に同調する父親にも、ため息のような笑いしか出なかった。


「檜山先生のおかげだよ」


 担任の名を出した事で、母親の顔が不快に歪む。


「あなたの努力でしょ」


 自分を軽くあしらった若造が気に入らないという思い見え見えで、母は俺を褒める。


 これが「母さんのおかげだよ」なら、きっと否定なんてしないんだろう。




 ――あなた達にはゲンメツしてる……。




 冷めた微笑を浮かべながら、心の中では口には出せない言葉を呟いていた。




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