第4話


「落ちるぞと危機感を煽ってみても駄目。私立を薦めても駄目。――なら菅田。どうしたら君は、『やる気』になってくれるのかな?」


「だから就職するって」


「……私が――嫌なんだよ」


「は?」




 さすがにポカンと、口が開いた。




「何それ?」


「君はやればできるのに、やらない。そして周りは――親さえもが、君が『できない奴』だと思ってる。私はそこが、気に入らない」


「………………」






 ――バカじゃないだろうか……。






 檜山を見つめ、思ったのはそれだった。




「さて、そこでだね。……最終手段だ。私のために、頑張ってみる気はない?」




 微笑む檜山の左薬指で、指輪が光る。






 直接彼に触れた事も、ないクセに。



 その指輪を外してやりたくて仕方なかった――。





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