第30話ログアウト

「なっ!? 何でお前がここに!?」

清二から驚愕の声が漏れる。頭痛のダメージで脱力していたケイトは、倒れたままその視線の先を追った。


「それぐらいにしておけ、清二。もう充分だろ」

そこにいたのはゲームの開発者、若林達也だった。若林は哀れむような眼差しを清二に向けていた。


「どうやってここに入ったんだ? ここは今、俺の支配下にあるはずなのに」

「何寝ぼけた事言ってるんだ。このゲームを作ったのは僕だぞ? お前はただ、シナリオとキャラデザインを考えただけだろ」

「そ、それは……ぐっ」

清二は突然頭を抑えだした。その表情には、困惑している様子が見て取れた。

若林は嘆息した。


「ゲームに取り憑かれたせいで、記憶まで混濁してしまったようだな。でももういい。こうやってお前が出てきてくれたおかげで、僕はお前に接触する事が出来た。圭人君が直球勝負を仕掛けた時はどうなるかとひやひやしたけど、結果オーライってことだ。これで終わりだ、清二」

若林は清二に向かって手を伸ばした。


「ログアウト!」

若林の声とともに、清二の身体が歪みだした。清二の顔が、恐怖の色に染まった。


「こんな……こんな事って! 俺は、このゲームの支配者なのに! うわああああっ!」

ほどなくして、清二の身体は完全に消滅した。若林は全てが終わったという風に、大きく息を吐いた。


「何がゲームの支配者だ。ただのゲームのキャラが、開発者に勝てるわけがないだろ。大丈夫でしたか? 圭人君?」

ダメージから回復したケイトは、ゆっくりと立ち上がった。


「ああ、何とかな。でもどうやってここに入ってきたんだ?」

「それぐらい、ちょっとプログラムをいじれば簡単な事ですよ。やよいもそれぐらい簡単に登場させることが出来れば苦労はなかったんですけど、なぜかそこには厳重なプロテクトがかかっていたんです。僕の知らないところで、このゲーム機は進化しているのかもしれませんね」

「開発者なら、しっかりゲームを作ってもらいたいものだぜ」

ケイトの皮肉に、若林は自嘲気味に笑った。


「そうですね。今度ゲームを作る時には、細心の注意を払って取り組みたいと思います。圭人君。ここまで協力してくださって、本当にありがとうございました」

若林の礼の言葉を受け、ケイト達はゲームの外へとログアウトした。

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