第28話お見舞いイベント

やよいが倒れてからの三日間、やよいが学校に来ることはなかった。

誰かに聞いたわけでもなく、ケイトの頭の中にその情報が流れ込んできたのだ。

ケイトは今商店街にいた。ゲームの仕様だからなのか、店の種類はバラエティに富んでいた。


スーパー、本屋、レンタルビデオ屋、飲食店、ペットショップ、雑貨屋、電気屋など、上げていけばきりがなかった。

ケイトはその中の一つの、スーパーの前に立っていた。


「やよいへのお見舞いの品を選べって事か。お見舞いイベントもお約束のシチュエーションだからな」

ご都合主義のイベントならすでに手の中にお見舞い品が握られていそうなのだが、今回は何もなかった。プレイヤーのセンスが問われるのだろう。


「ここは定番の品でいこうかな。どうせ何を選んでも喜んでくれそうだし」

ケイトは買う物を決めて店の中に入ろうとしたが、ふと周りを見回した時にひとつの店に目がとまった。

「あの店は……」

ケイトはスーパーで買い物した後、その店にも入っていった。



「こんにちは」

やよいの家まで飛んだケイトは、玄関の呼び鈴を鳴らし、出てきたやよいの母親に挨拶を交わした。


「あら、ケイト君。やよいのお見舞いに来てくれたの? わざわざありがとう。やよいなら二階の部屋にいるから、あがってっ行って」

「お邪魔します」

ケイトは前回来た時も通った階段を上り、迷うことなくやよいの部屋の前までたどり着いた。


「やよい、おれだけど、入ってもいいか?」

ドアをノックして声をかけると、間もなくしてやよいの返事が返ってきた。

「ケイトさんですか? どうぞ」

部屋に入ると、黄緑のパジャマ姿をしたやよいがベッドに腰掛けて本を読んでいるところだった。


「よう、仮病少女」

「仮病じゃないですよ」

ケイトの軽口にやよいは苦笑いをした。


「学校休んで優雅に読書して、仮病じゃなければ何だって言うんだ?」

「もう体調はいいんです。明日には、学校に出られます」

「そうか」

ケイトは適当なところに腰掛けた。


「それにしても、公園でも本を読んでたけど、本が好きなのか?」

「はい。私、小説読むのが好きなんです」

「そんなに面白いのか? その官能小説」

「そんな本読んでません!」

やよいは真っ赤になって否定した。


「まあ、何読んでてもいいんだけどな」

ケイトはビニール袋から買ってきたプリンを出して食べ始めた。

「……あの、もしかしてそれって、私のお見舞いに持ってきてくださった物じゃないんですか?」

やよいはジト目でケイトを睨みつけた。


「元気な人間に食わすお見舞い品なんてない」

「まあ、確かにもう身体は大丈夫だからいいんですけど……」

やよいはどこか釈然としない表情だった。


「冗談だ。二つ買ってきたから食べていいぞ」

「もう、意地悪です」

そう言いつつも、やよいもまたケイトが買ってきたプリンを食べ始めた。


「私のためにわざわざありがとうございます」

「まあ、一応はおれが原因でこうなったからな」

ケイトはぶっきらぼうに言い放った。

「それともう一つ、お見舞いの品を持ってきたんだ」

ケイトはもう一つのビニール袋から箱に入った物を取り出した。

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