第25話隠しキャラ攻略へ
ケイトが回線を開くと、若林の声が聞こえてきた。若林と会話するのは、久しぶりだった。
「圭人君。やよいと話をしていて、何か違和感を感じませんでしたか?」
「違和感?」
突然出された妙な問いかけに、ケイトは首を傾げた。
「特になかったと思うけど」
「そうですか……。こちらでもモニタニングしてましたけど、確かに違和感がなかったんです」
「あのキャラに何か問題でもあるのか?」
若林はここで息を整え、落ち着いた声で切り出した。
「実は彼女こそが、僕が探し求めていた隠しキャラなんです」
「えっ!?」
ケイトは驚きの声を上げた。ただの新キャラだと思っていつもの調子で接していた相手が、まさか隠しキャラだと思わなかったのだ。
「圭人君は見事に条件をクリアして、隠しキャラと遭遇することが出来ました。本当にありがとうございます。ですが、問題はここからです。あのキャラの中に、友人の意識が残っているかどうかです。先ほどのやよいは、僕たちが設定した通りのやよいでした。なので、どうなのかが判断出来ないんです」
「もし意識がなかったら、どうすればいいんだ?」
「どうするのが最善なのかは実際のところ分かりません。今言えることは、引き続き様子を見ていく事だけです。一体どこまでやよいのシナリオが進行していくのか。それを確認したいので、このままゲームをしていただけますか?」
若林の言葉に、ケイトは不安を抱えた。
「さっき嫌われるように悪態ついて好感度を下げちゃったけど、バッドエンドになったとしてもいいのか?」
「それなら心配いりません。やよいにはあれでもいいんです。本人もゲーム中に言ってましたが、普段は気を遣われてばかりだったので、ああいう接し方をされると嬉しかったりするんです。優しくしてもいいし、厳しくしてもいい。つまりは、基本的に好感度が下がる事がないって事です。ここまで頑張ったプレイヤーへのご褒美として、そういう補正がかけられています」
「……相変わらずご都合主義のゲームだな。でもそういう事なら……なあ」
さっきまではやよいを女の子として見られていたが、中に若林の友人、中原清二が入っていると思うと、男を相手にしているような気がして複雑な思いだった。
ケイトをしては、もうやよいと普通に接する自信がなかった。
「……やっぱり、今まで通りのスタイルで行こうかな。男を相手に攻略していくのはなんか気持ち悪いし」
「やよいは女の子ですよ?」
「いや、そう言う事じゃなくて……」
「……まあ、なんにしても、圭人君がやりやすいようにプレーしてください。こちらからも注意して見ていますから、圭人君も何かやよいに違和感を感じたらすぐに教えてください」
「分かった。それじゃ、ゲームに戻らせてもらうよ」
回線を切り、ケイトは再びゲームを再開させた。
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