番外編【女子更衣室にて】

 かしましい声がどんどん増える。

 女子更衣室の熱気はもうすぐピークを迎えるだろう。


「ねーねー◯◯くんとはどうなってるのよ」

「普通かな。そういうアンタこそ関川くんとどうなのよ」

「ちょ、まだコクってもないし! できればコクらせたいし~」


 ヤバい、完全に脱出機会を失ってしまった。

 僕はロッカーの中で、これから起こるであろう展開を想像し、恐怖におののいていた。


 大好きなトリ子ちゃんの匂いが付いた服を顔に押し付けてスーハーしたいなんて思わなければよかった。ここまで上げたパブリックイメージが水の泡に……


 あの子が笑談しながらここに近づいてくるのが分かる。

 僕の入っているロッカーがカチャカチャ鳴り、そしてとうとう。


 その瞬間が訪れた。


「えっ、関川……くん?」


 正直に土下座するべきだろうか?

 それとも誤魔化すべきだろうか?

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