【甘美なる泥と屈辱の味――靴舐め・足舐めの魅力を広め隊!】
かわいい姉の思い出
最初は小学五年生になったばかりの頃だった。
ねえちゃんが中学生になり、部活で帰宅するのが遅くなったせいで、制服のまま晩御飯を食べていた。
「すい、背中踏んでくれや」
僕の隣で寝転がってテレビを見ていた父ちゃんがねえちゃんを呼んだ。
「いいよー、食べ終わったら行くねー」
キッチンから返事が聞こえた。父ちゃんはマッサージが好きで、よく僕やねえちゃんに背中を踏ませたり、肩や足を揉ませたりしていた。その時の僕は自分に声がかからなかったので、正直ほっとした。めんどくさかったから。
そのまま父ちゃんと野球の試合を観ていたら、ご飯を食べ終わったねえちゃんがやって来た。
「じゃあ、踏むねー」
ねえちゃんは制服のまま、父ちゃんの背中に乗ると、両足で踏み始めた。
ふみふみ
ふみふみ
いつもと同じはず……なのに、僕はなぜかねえちゃんから目が離せなくなった。いや、違う。目をそむけた。黒いソックスを履いたままのねえちゃんが父ちゃんの背中を踏んでいるのを見て、なぜだかいけないものを見ている気がした。一度は目をそむけたものの気になってしょうがない。中学生としては小柄なねえちゃんが健気に足を動かしているのを僕は何度もチラ見した。
なんとなくねえちゃんと距離を置き始めたのは、それからだった。中学生になり、クラスの女子の黒いソックスを見てちょっと興奮したことはあるけど、ねえちゃんにはかなわなかった。本人には黙っていたけど、週に3回はねえちゃんだった。
○○○
高校三年の冬、センター試験直前の僕は、家族の気遣いもあり、勉強に集中できていた。東京の大学に出ていたねえちゃんが帰って来てたけど、これといって会話もなかった。だけど、ココアを入れようとキッチンに下りたとき、たまたまねえちゃんが成人式用の振袖を試着しているのを見てしまった。
白い足袋を履いていた。
部屋に戻った僕の頭からはなぜか、あの白足袋でねえちゃんに背中を踏まれる妄想が離れなくなってしまった。
実は僕は中学生の頃、ねえちゃんのストッキングを盗んだことがある。風呂から上がったあと、洗濯物のカゴの中に入っていたそれを手にすると、家族に見つからないように丸めてポケットに入れ、そそくさと自分の部屋に上がった。衝動が抑えられなかったのだ。だけど、部屋に戻ってみると、宝物のようにいただいた布地を如何ともしがたく思った。なんとなく股の間や足先を嗅いでみる。
足先から強く、ねえちゃんの匂いを感じた。
それからしばらく、一週間に一度くらい、ねえちゃんのストッキングやソックスを拝借し、匂いを嗅いではこっそりと元に戻していた。
そんな匂い泥棒の常習犯だった僕が足を洗ったのは、その年の夏場のことだった。暑くなるとともにねえちゃんの匂いは強くなり、僕は毎晩ねえちゃんのソックスを楽しみにしていた。
そんなある日のこと。
「いっちゃん、先にお風呂入りなー」
ねえちゃんに声をかけられた僕は、ぶすくれながら風呂に入った。当時ねえちゃんのことは大好きだったけど、そんなことを素直に言えるわけもなく、常にぶっきらぼうな態度をとり続けていた。それに、僕が先に風呂に入ったら、ねえちゃんが脱いだソックスを取りに後で風呂場に来なきゃいけないし。家族に見つかるリスクは避けたいし。
そんなことを考えながら一人風呂に入り、ふと思った。ひょっとして、すでに僕の行為がバレていたらどうしよう。それを嫌がったねえちゃんが先に僕に風呂に入るよう、仕向けたのだとしたら? もし本当にバレているのだとしたら、僕の人生、おしまいだ!
怖くなった僕は、その後、ねえちゃんのソックスに手を出せなくなった。葛藤の日々が続いたが、なんとか克服した……はずだったのに。
あの振袖の下からちらっと見える細くてやわらかそうな足のその先に、つま先の割れた真っ白な足袋が見えた瞬間、僕は激しく動揺した。あれを手に入れることはできないものか、ねえちゃんが一日穿き終わったあれを裏返し、くんくんし、ぺろっとすることはかなわぬものか、その思考だけで僕の頭はいっぱいになってしまった。
そのとき
――コンコン
部屋のドアをたたく音が聞こえた。
『いっちゃん、今大丈夫?』
ねえちゃんだ! ヤバい、気持ちをおさえなきゃ。
その後部屋に入って来たねえちゃんと、何を話したのか、僕は覚えていない。ねえちゃんは相変わらずメチャクチャかわいくて、お風呂上がりのいい匂いがして、だけどその足にはとても目を向けられなかった。顏をそむけた僕にやさしく「勉強がんばって」とはげましてくれたねえちゃんは、夜食を置いていってくれた。
○○○
その年の春、僕は地元の大学に行くことが決まった。高校を卒業し、ねえちゃんからも卒業した僕が心機一転スタートするべく、キャンパスでサークルを見て回っていると、新人勧誘中の女性から声をかけられた。
「ひょっとしていっちー君? この大学に来てたんだ! すいから話聞いてるよ! あ、私、ゆうと言います」
二年先輩のその女性は、ねえちゃんと同じ学年の先輩だった。童顔のメガネっ娘で、年上に思えないゆうさんは、ねえちゃんとは違った雰囲気だけどかわいらしくて、カジュアルな春物ジャケットにベレー帽、黒ストッキングと、いかにもねえちゃんと趣味が合いそうな女性だった。
なぜ彼女が僕のことを知ってるのかはわからないが(ねえちゃんが写真を見せたのだろうけど)先輩だけどかわいい、そのギャップに魅かれた僕は、迷わずそのサークルに入ることを決めた。文芸同好会という一見地味な活動にはあまり興味はなかったけど、なんとなく居心地が良さそうに思えたんだ。
夕方から10人くらいの部員で新歓コンパが始まり、お酒を飲む先輩方と触れ合う中、僕の席の前にはゆう先輩が座っていた。話を聞いたところ、彼女は理学部生物学科で、主に昆虫の研究に取り組んでいるらしい。文系の僕には理解できない世界だけど、彼女にとっては自分が完全に「理系女子」であるというつもりはないらしく、サークルでバランスをとっているのだとか。そんな真面目な話の中、僕はまったくバランスがとれていなかった。お店に入り、靴を脱いだ時から僕の目は彼女の足ばかり追っていた気がする。天然っぽいゆう先輩は少しも気づいてないけど。
そう思った時だった。僕の足の裏に、ゆう先輩が足を乗せたのだ。
(えっ?)
靴下越しに先輩のストッキングの温もりが伝わる。先輩は気にせずに話しを続けるんだけど、ひょっとして、酔っ払ってる? 僕は足が気になって話を上の空で聞いていた。ピッタリと重ねられた足裏の感触にドキドキしながら。
そうこうしているうちに会がお開きになり、お酒を飲みすぎたゆう先輩を僕が自宅まで送っていくことになった。
みんなと別れ、二人きりになった時だった。
「いっち~くん~いまから~いいことしに~いこうよ~」
先輩に言われて僕はあわてた。
「えっと、先輩……ひょっとして酒癖悪い……ですか?」
「な~にいってるのかな~ちみは~ぜ~んぜん、ぜ~んぜんよってな~い~よ~」
ろれつが回らないくせに赤ら顔で心外だと、持っているバックをブンブン振り回す先輩。
その仕草がかわいすぎて、僕は意を決した。
「先輩、今、彼氏とかいます?」
「え~っ~いないよ~わるいか~?」
――ゴクリ……
「ぼ、僕じゃ、ダメですか?」
「な~にいってるのさ~いっちーはね~わたしの~げぼく~なんだから~」
は? 下僕?
「そ~よ~。あんたはね~あたしの~げぼくなのよ~いくよ~」
そう言いながらもべろんべろんの先輩は僕をぐいぐいと引っ張っていく。
「ここよ~」
そこはラブホテルだった。
○○○
「えーっと、先輩、あの、その、僕、初めてなんですけど」
「な~にが~?」
「その、こーいうとこに入るのも、そーいうことするのも……」
これまでラブホテルの中に入ったことがなかった僕は、初めて見る内装にドキドキしながら言ったが、先輩は経験ある……んだよね、やっぱり……
「いっち~なんか~かんちがい~してな~い?」
「えっ?」
「わたしはね~じょおうさま~なのよ~とりあえず~よっこいしょ~」
そう言って先輩がベッドの上に座る。そして定まらない視点のままで続けた。
「ほら~はやく~わたしのあしを~なめてよ~」
「……えっ?」
「すいの~そっくすは~すきだったん~でしょ~? わたしのは~だめだってか~?」
うそだろ……
なんで知ってんだよ……
「こ~のへんたいが~ ばらされたく~なかったら~わたしの~ゆーこと~きく~の~」
えっと、なんだろうこの微妙なシチュエーション。背筋に冷たいものが走りまくりなんですが。っていうかねえちゃんおい……
「ほらほら~はやくしろ~」
「……は、はい」
僕は頭をかきながら彼女の足元に四つん這いになると、彼女の足のつま先をストッキングの上から咥えた。
もしかすると、ねえちゃんの話がなければ僕は今、至福の時を迎えていたのかもしれない。しかし、なんだろうこれ、全然うれしくないんですけどー。匂いも何もわからないんですが?
そう思いつつ、ちらっと上目使いでゆう先輩を見上げると、彼女はにやりと笑いながら僕の表情をスマホで撮影していた。
「いいねいいね~すいにも~そ~しんするからね~」
「ちょ! それだけはやめてくださいよ! それだけはマジで勘弁!」
「じゃ~さ~いっち~くん これからも~わたしの~げぼくとして~ちゅうじつに~はげめよ~zzz」
そのままゆう先輩は眠ってしまった。
ねえちゃん、僕はこれからどうすればいいですか? そして僕の事、許してもらえますか?
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