第33話心の傷

アンが入院してから2ヶ月が過ぎた。

大部屋に移ってもアリサちゃんも同じ部屋になったの。

で、今日はアニィが迎えに来て。おうちへ外泊。


砂利道の道路を二人で歩いて会話中・・・

車椅子で自分で歩いているアニィが一方的に話してる。

アンは下を向いてずっと黙ってて。

うんとかへえとか言ってるだけ。


「アン」

「退院したらお祝いになんでも好きな物を買ってやるよ」

「何が欲しい?」

「給料も出たし奮発しちゃうぞ」


「・・・・」


「なんだって」


通りが少ない砂利道は時々乗用車が砂埃をあげながら走り去る。

アンは立ち止まって下を向いている。

アニィは立ち止まって車椅子をUターンさせる。


「何が欲しいんだアン」


「あ、あのね」

「アンはアニィの子供が欲しい」

「スーパーで500ゼゼコくらいで売ってるよね」


地面を見ているアンの顔は赤いの、汗も大量にかいてるし。

もう夏の日差しが強くて薄着じゃなければ汗をかく季節。


「なんだって!」

「アン・・・それはどこにも売っていないぞ」

「二人で作らにゃならんし」


「看護婦のハルサメさんがエッチなことして作るんだって言ってたよ」


アンはまだ下を向いてジーパンの前ポケットに右手を入れている。

左手でアニィの車椅子の押し手を掴んで。

またアニィの車椅子を前に向ける。


アニィの顔も赤くなってる。


「今日から頑張ってね?旦那さま」


「お、おう」

「まかせとけ」


「あそこにあるハゲタカスーパーで牛乳とトマトと肉を買いたい」

「アニィお金持ってる?」


「ああ」

「今夜はケイトさんが来るんじゃなかったのか?」


「うん」

「そうだったね」


・・・・・・・・・


ハゲタカスーパーで買い物をしてから帰った。

家の前の通りで大きな乗用車が止まってる。


「あ、あの人アンの知り合いじゃないのか?」

「ドアを開けて降りてきたぞ」

「作業つなぎを着ているな」


作業つなぎを着た男の人が大きな赤い花束を抱えている。


「あれえ」


「アン!」


「あなたは!」


「アン、病気になったと聞いて駆けつけたんだが」

「運が良かったな」


「ワズマン中佐殿!」


「いや、今は軍は退役したんだ」

「リィズと呼んでくれ」

「アン」

「会いたかったよ」


「アンは元気です」

「今日はチョンゴンシティから親友のケイトも来るから」


「アンの友達が来てくれたんだな」


細身で二枚目のリィズさんはやはり奥さんが居るらしい。

実家のガソリンスタンドを継いで頑張ってるんだって。

彫りの深い顔ををしわくちゃにしながら話してくれた。



それから今夜は4人でお酒を飲んで昔話をして騒いだの。

何でもないくだらない会話が楽しい。


「アニィ」

「今日はできないね?」


「うん」


二人でこっそり会話した。

ケイトとリィズさんが昔よりも明るく振舞っている。


深夜11時前。

アンはベッドの横で一人で思案中。


まだ食台で3人が楽しそうにお酒を飲んでいる。


「ちょっとアン」

「何しんみりしてんのよ」


「うん」

「同じ病棟の入院患者のアリサちゃんが言ってたんだ」

「アンさんは何がしたいのですかって」


「え?」


「彼女は一日中漫画を描いているような娘なんだけどね」

「いつも言ってるの」

「自分がしたいことをすればいいんですよ」

「たとえ今までが自分が運命に使われてきたとしても」

「アンさんが何をしたいのかを見つけるんですって」


「ほう、そのアリサちゃんて娘もかなりの哲学者だな」


「リィズさんがそう言うくらいだから」

「アリサちゃんてアンの過去を知っているのかしら」


「またまたあ」

「アンの考えすぎよお!」

「さあ」

「夜は長いわよ」

「さみしさなんてどこかに吹き飛ばしてしまいましょうよ」


それから明け方近くまで4人で会話して遊んだ。

アンがさみしい想いをしませんようにって・・・


アンの心は泣いていた。嬉しくて泣いてるの。

心が傷ついていたんだなって分かった。

自宅への外泊は二泊三日。

次の日の朝、ケイトとリィズさんは帰っていった。

アンとアニィに気を使っているみたい。




で、病院に帰ってきたけど。

帰るなりハルサメさんに言われた。


「アンたん」

「旦那の子種はもらったかい?」


「い、いやらしいなあ」

「ハルサメさんは」


「いいんですよアンさん」

「アリサもアンさんの子育て応援してますから」

「まずは早く製造してください」


「あ、アリサちゃんまで」

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