第25話アンの生存・その正午

南部歴0086年の初夏なのよ!



私「うーん・・・」

 「4,980ゼゼコかあ・・・」

 「高いなあ・・・」


あ、私はアン・ユウリィなのよ。

今、営業中のデパートの5階・雑貨売り場で。

商品のディ・バッグと、にらめっこしている最中なの。

この値札に表示されている金額がキーなのよ。

3000ゼゼコなら迷わず買うんだけど。

ほとんど5000ゼゼコの値段だと、私の金銭感覚が・・・

私の心の中で


私「チョイとお持ちになってあなた様」


と地団駄を踏ませるのよ。

派手な赤とオレンジのカラーが、ひと目で私を釘付け。

合成麻薬・・・じゃない合成革皮だけど。

素材も縫製も丁寧で、耐久性と信頼性が高そう。


今、私の全財産が10万ゼゼコ位あるの。

酒場のバー「あほうどり」で何ヶ月か働いたから。

給料がまだ残ってるんだけどね。

あ、そうそう。ママのメルさんに雇って貰ってたんだけどね。

何か戦争が原因らしくって、赤字に成りそうだからって。


メル「アン、悪いけどもうここを辞めてもらうわよ?」

 「ごめんなさいね、あんたに払うお給料が無いのよ」


って追い出されちゃった。てへへ・・・


でも働いた分のお給料は貰えたから。

またこうして「さすらいの野宿イケ少女」を演じている私。

今はまだゼゼコが少しはあるから、余裕があるんだけど。

早く次の仕事見つけなきゃ・・・


あ、そんな事よりも。

今目の前にある値札タグと戦ってるのよ私、アンは。

いつまでも悩んでたら、営業時間が終わってしまうわ。


・・・・・


よしっ!決めたわ。思い切って買っちゃう!


チン・ガタガタ・・・ジー・・・ジャラジャラ


女性店員「ありがとうございました」


・・・・・・


私「あらら、もうお外が暗くなっちゃった・・・」

 「さあ、今日のお宿はどーしよっかなあ・・・」


呼び込みの兄ちゃん「さあ、イラハイ・イラハイ!」

      「そこのお兄さん!安くしとくよ?」


私「私は女の子なのよ?おさわりバーで働かせる気?」


兄ちゃん「げっ!あんた娘っ子か?こりゃ驚いた」

    「ネーちゃん。すげーたくましそうに見えたから」

    「お客さんかと思ったよ」


私「私のどこがたくましいのよ?あんた眼科に行きなさい!」

「私のこの婦女子の黄金・ポニーテールが目に入らないの?」


兄ちゃん「チョットそこの社長!いい子が居ますよおっ?」


ゲッ!


この兄ちゃん、もう他の客にアタックしてるわ。

何て商売上手なのかしら?




・・・・・・・・

私「ああ、歩き疲れたわ」

 「随分と遠くまで来たけど、ここは何処なのかしら?」

 「街というよりも都市よね」

 「誰も居ないみたい・・・」


カサカサカサッ!


なななな、何かが動いたわ今!誰も居ないはずなのに!


私「何でこんな不気味なコンクリート・ジャングルジムに来ちゃったのかしら?」


ツイて無いったらアリャシマセンワ!


あれ、向こうの方から誰か来るわ。なんかヤバそう。

このビルに隠れたほうが良いわね。


・・・あの人たち兵隊さんだ。

カンガルー軍ね。何かヤバそうな気が出まくってる、

あれ?

あの反対側の向こうに他の人たちが隠れてる。

あ、敵さんの兵隊さんか。


私「うわあ、待ち伏せしてるんだ」

 「カンガルーさん達気がついてないよ、ニッブイなあ・・・」


私、アンは田舎育ちで目だけは良いのよね。


あの兵隊さんが狙われてる!


私「おーい!おじさんっ!危ないよ?早く逃げてえー!」


おじさんが私に気がついた。


私「おじさん達狙われてるよっ?逃げなきゃダメだよっ!」


・・・・・・・


おじさんが何か言いたそう。

うわっ!撃たれちゃった。


ヒューン・・・


ズドォーン!



ぎゃー!

大砲の弾が飛んできたおっそろしい!怖い・・・でも。

早くあの兵隊のおじさん助けなきゃ!

まだ生きてるみたい・・・


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