第24話アンの生存

今は南部歴・・・んと何年だったかな?

0086年だっけ?まだ戦争中なの。


私アン・ユウリィはとにかく故郷から戦災を逃れて。

独りで西にある知らない町に居るの。

その日暮しの日暮し。ほとんど乞食ね私は。

前に日雇いで働いたお金ももう底をついちゃった。

お財布には、100ゼゼコしかないわ。

冬を越すために購入した。ハリモグラのコートも、もうボロボロ。

やっぱ安物はダメね。裁縫も生地もハンパもんだわ。

今は長雨で、昼間っから傘も無く雨に打たれて市場の片隅で・・・

くだもの屋さんの出店の近くでじっとしている。


私「お腹減った・・・」


もう2週間も何にも食べてない。だってお金がないんだもん。

お母さんに食べさせてもらってた去年が懐かしい・・・

ダイエットになって丁度良い、どころか背中とお腹がくっつく。

あ、店番のおじさんがコックリコックリを始めそう。

しめしめ。

周りの大人達は、みすぼらしいルンペン少女なんて気に留めていないわ。


ぐぅぅぅぅ・きゅるるるる・・・


・・・


ごめんね、お腹の虫さん・・・泣かないで。

あなたに食べさせるご飯が無いの。

あなたの為のお金がもう無いのよ。


私「ごくん・・・」


ハッ!いけない。ヨダレが止まらないわね。


じいいい・・・


目が商品の果物に釘付け状態。

コロコロめかんとパインカップル。

あたしの好物を狙ってるの。

パインカップルは分厚い皮で防御されてて食べれないから。

私の空手チョップでブッた斬って・・・・


「ハッ?」


今私、何考えてたんだろう。意識がブッ飛んでたわ。

私の果物ナイフで切ればいいのに。


「ハッ!そろそろね」


そ~れそ~れ。今、私アンが眠る電波光線を送ったわ。

10秒後におじさんは眠りの国へ旅立つのよ!


うっひっひっひっ!


・・・・・・


くだもの屋「・・・・ふが」


「!」


ダダダダダダダッダ!バシャバシャバシャバシャ!


むんずっ!むんずっ!むんずっ!


ダダダダッダダダダダダダ!バシャバシャシャバシャバシャ!



「はあっはあっはあっはあ!」


コートがずぶ濡れで重量オーバーだわ。

ここなら誰にも見られないわね。


ガサゴソゴソ・・・・


ピンッ!


私「ふっふっふっ」

 「あんたの命もここまでね。パインカップルさん?」

 「てやあっ!」


ザクッ!ザクッ!ザクザクッ!


ガブッ


むしゃむしゃむしゃ!


 「う、うううう。美味すぎますわお嬢様♡」


嬉しすぎて涙が止まらない。


・・・・・・・・


私、アンは今日も生存したのよ!


・・・・・・・・


雨が止まないわね。傘がどっかに落ちてないかしら。

何日か食いつないだ。私ってたくましい。イケ少女ね!

夜だから。商店街の裏の通りで、雨をしのいで眠る私。


・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


アニィ「おいアン。傘が無いなら僕の傘の中に入って帰ろうよ」


私「いいもん!お母さんが迎えに来てくれるもん!」


アニイ「・・・アン。なんで嫌なんだよ?」


私「だって、アニィ兄ちゃんとアイアイ傘したら」

 「学校中でからかわれるもん!」


アニィ「そんな事気にしてんのかアンは・・・」

   「・・・・・・・・」

   「もういい!知らないぞ、僕は帰るからなっ?」


私「バイバイ、アニィ兄ちゃん!」


バシャバシャバシャ!


3時間後、まだ小学校の玄関口で独りきり雨宿りしてる私。

真っ暗になっちゃった。

あれ、誰かがこっちに来る。


私「お母さん!」


母「アン、何してんのこの子は?」

 「心配かけるんじゃありません!」


私「ごめんなさいお母さん。てへへへ!」


母「さあ、早く帰って晩ご飯食べましょうね」

 「アンの好きなオワンカレ・スープも作ってあるわよ?」


私「わーい!オワンカレだオワンカレだあ!」


・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


私「はっ?」


ゆ、夢か。

リアルな夢だった・・・

お母さんに会いたいなあ・・・

オワンカレ・スープが食べたいなあ・・



・・・・・・


カランカラン・・・


店のママ「いらっしゃいませえ」


私「あのう・・・」


店のママ「・・・あんたお客さんじゃないわよね?」

    「ここは夜の営業の酒屋バーよ。分かってんの?」


私「あ、あの、外の従業員募集の張り紙を見ました」

 「ここで働かせて下さい!」


ペコリ・・・


ママ「・・・うーん。確かに人手が足りなくて困ってるんだけど」

  「あんた、歳はいくつ?」


私「20歳です」


・・・ホントは18歳なの。


ママ「・・・・」


コックのおじさん「いいじゃないかメル。雇ってやれよ?」


ママ「あんたがそ~言うなら・・・」


コックのおじさん「お嬢ちゃん、クニは何処だい?」


私「チョモル村です」


ママ「・・・聞いたこと無い土地だねえ」

  「よっぽど田舎なんだろうねきっと」 


私「ハイ、てへへ・・・」


さあ、初勤務よアン。気張るわ私は!


カランカラン・・・


ママ「いらっしゃいませえ!」


私「いいいい」

 「いらっさいませえ・・・」


お客のおじさん「なんだいメル。新しい娘を雇ったのかい?」


ママ「ええ、そうなのよ。ご贔屓にしてやってね?」


他の客のおじさん「お嬢ちゃん可愛いねえ」 

   「でも何か臭うな・・・」


ママ「!」

  「服を着替えさせるだけじゃダメか・・・」

「アン。あんたいつから風呂入ってないの?」


私「うーんと・・・何ヶ月かなあ?」


ママ「!!!」

  「あんた接客はいいから厨房を手伝いなさい!」


私「ハイ!メルさん」


・・・・・


コックのおじさん「アン、芋の皮むき上手だなあ」

    「おうちでお料理手伝ってたのか?」


私「えへへへ。お母さんのお手伝いしてたの」


コックのおじさん「裏で生ゴミを捨ててくるから」

     「ちょっと鍋を見てておくれ」


私「はい」


・・・・・・・


ぐつぐつぐつ・・・


あ、これオワンカレ・スープとコタツイモだ。


私「ちょっと味見・・・」


ズルズルズル・・・



私「う、うまいわこれ!」

 「お母さんが作ってくれるオワンカレ・スープと全然違う」

 「一体どーやって作るのかしら?」



何かお店が騒がしいわね。何かあったのかしら?


私「メルさーん。何かあったんで・・・」


メル「アン!あんたは奥に隠れてなさいっ」


私「え、何かあったの?」


メル「しいぃぃ・・・」

  「カンガルー軍の奴らが来てるのよ!」

  「あんたには売春の仕事なんてさせないからね!」

  「あんたど~見たってネンネだもの」


私「へ?」


メル「早く二階へ上がって私のベッドで寝てなさい!」

  「今日はもう仕事はいいから」


私「は、はい。メルさん」


・・・・・・・・・・


私が年齢詐称したのバレてんのかしら?

まあ、良いか。これでご飯に困る心配も無くなったし。

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