第17話再会

第六章


南部歴0089年。戦争は終結し平和の花が芽生えています。

人々は生活を立て直すため働き、心の傷を癒そうとしています。


アンが産まれ故郷のチョモル村に暮らして半年が過ぎようとする頃。

役場のポルカさんから、アニィが帰って来たと連絡が入りました。

アンは、はやる心を抑えて臨時病院まで駆けつけます。


アン「はあっはあっはあっ!」


アン「あのうすみません!」

 「こちらにアニィ・ベーカリーが搬送されたと伺ったのですが!」


事務員の女「ベーカリーさんの身内の方ですか?」


アン「ハイ!」


事務員の女「あちらの病室に居ますよ」

     「どうぞこちらへ」


アン「ハイ!」



ドクター「ベーカリーさんの家族の方ですか」


アン「あの・・・アニィは?」


ドクター「この患者さんです」


アン「!」


アン「あ、あ、あ、あ、」


何と言うことでしょう。全身を包帯でぐるぐる巻きにされたこの患者は。両足の太ももから下がありません。

無言のまま意識はしっかりしているようですが・・・


ドクター「意識はありますが・・・」

    「ずっと放心状態です」

    「自分が負った怪我を受け入れられないのでしょう」

    「一言もしゃべりません」


アン「あの、どういった事故だったんですか?」


ドクター「軍からの報告文によるとですね」

    「ある作戦中に、敵軍の猛攻撃を受けて」

    「撤退命令が出ているのに、命令を無視して単独で」

   「取り残された友軍部隊を救出しに引き返したんです」

「敵軍と友軍の野砲の十字砲火の中へ飛び込んで行ったんですよ」

「で結局」

「本人が重傷を負い、取り残された味方は全滅したそうです」

「命令違反をしたので名誉除隊ではない病気除隊扱いだそうです」

「勲章は1つだけもらえましたが、やりきれないですよね」


「もう治療が一段落したので」

「おうちに連れて帰っても結構ですよ」


アン「ああああ」


アニィ「・・・・」


アニィは一言も喋らず天井を見てまるで生気が抜けたようです。


アン「・・・・」

  

アン「アニィ・・4年前の約束を覚えていますか?」


アニィ「・・・・」


アン「アニィ、私はまだ幸せに成っていませんよ?」

  「約束通り、私にバツを与えて貰います」

  「私を誘拐して妻にして貰います」

  「そして死ぬまで私を守って貰います・・・」



チュ・



アンが包帯で巻かれたアニィのおでこに軽くキス。

黒い瞳から涙が流れています。


アニィ「・・・・」


役場のポルカさんに無理を言ってリヤカーを借りてきました。

アニィを載せて夕暮れの中アンはリヤカーを引いて家に帰ります。


アン「アニィ、もう私をひとりにしないでよ?」

  「独りはもう嫌・・・怖すぎるもん」


アニィ「・・・・」


お母さんの土地にアンは新しく家を建てました。

アニィの家も無くなっていました。アニィの家族も行方不明。


アン「やっと私が幸せをつかむ時が来たの」

  「もう誰にも邪魔させない。私とアニィの二人だけの時間を」

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