第9話休息の火薬庫

次の日。リィズ少佐はアンからいきさつ、どうして市民の少女が一人で戦争をしているのか聞き出そうとしました。

だけどなんか変なんですよね。

アンがはなみ放さず持っているアサルトライフルを取り上げようとすると。


リィズ「よこせっ」


アン「やんやん、中尉の!」

  「中尉殿のっ」


アンの顔が赤くなって、イヤイヤをしています。


リィズ「なんのことやら・・・」


しょうがないから、銃に刻印してあるシリアルナンバーから。

所有者を部下に調べさせます。

すると・・・


カタカタカタカタ・ピッ


部下B「持ち主、出ました」

   「キム・ベクトル軍曹」

   「第99歩兵師団第3大隊所属」

   「数ヶ月前のチョモイヤシティでの哨戒任務中に行方不明」

   「戦死扱いとなっています」


リィズ「・・・・・」

   「まさか、本人を殺して奪ったわけでもあるまい」

   「昨日のあの子の戦闘っぷりもおったまげたが」

   「乙女っぷりも見事だ」


この娘が持っている銃は101式自動小銃(イーワンしき)だ。

カンガルー軍が正式採用しているポピュラーな銃。


待機室で周りの兵らと一緒にトランプゲームをしているアンに。

リィズ少佐は尋ねます。


リィズ「銃の手入れは自分できちんとしているのか?」


アン「うん。やってるよー」

  「バラバラに分解して、油を差せばいいんだよねえ」

  「はい、私あがりー!」

  「ねえ、私一番?ねえねえ」


兵士D「まいったよ、お嬢ちゃんの勝ちだよ」


リィズ「うーん、謎だらけだ」

    (普通のコムスメにしか見えんこの子が・・・)

    (ひとつだけ理解した)

    (このムスメは興奮すると、自国の言葉しか話せなくなるらしい)

   (このムスメには、装備なんてないのか)

   (完全な民兵だな。ライフル一つで戦争してるつもりか)


拳銃とナイフを与えなければ。防弾チョッキも着せないと。

野球帽は、うーん。この子の頭に合う防弾ヘルメットなんてあるのか?


リィズ(アンの故郷のチョモル村落はいまだ敵が掌握している)

   (家に帰れとも言ってやれない自分も愚かだと思う)

   (何でこんなくだらんゲームがこの世に存在するんだ)

   (まったく・・・)


アンの着ているポロシャツはひどく着古してボロボロだったので。新品の迷彩柄Tシャツをプレゼントしてあげました。


アン「少尉殿ステキーッ♡」


少佐にアンが抱きつきました。今回はキスは無しのようです。

リィズ少佐の顔が赤くなりました。


暇をぬってリィズはアンの射撃訓練を実行。

すぐにアンの悪いクセを見抜きました。

それは射撃モードにこだわり射撃の命中精度にかたよった、

自動小銃らしさを嫌った一発に賭ける射撃です。


アン「だって・・・」


リィズ「弾切れが怖いのか?」

   「無防備になるリロードもか?」


アン「うん・・・」


リィズ「いいか?お前は普通の女の子だ」

   「こんな醜い男の人殺しゲームには必要のない存在だ」

   「それに、俺たちみたいな紳士の男ばっかでもないぞ?」

   「女の子なら女の子らしく生きなさい」


アン「はい」


リィズ「この子が調子に乗ったら手がつけられないだろう、誰も」


ポイント・ヤマタカタロウ基地は中継地点。

まだ敵軍との交戦はありません。

補給トラックや兵員輸送トラック、装甲戦闘車両や戦車が。正門からひっきりなしに往来。

後方から来たトラックから増員の補充兵たちがトラックを乗り換えています。

アンは土の地面に打ち込んである木の上にあぐらをかいて。

自分のライフルを楽しそうにウエスで磨いています。


アン「フンフンフーン♪」


兵士M「よう!ネーチャンいくらだあっ!?」


他の兵たち「ゲラゲラゲラッ!」


アンはふてくされた顔で、親指を下に下げています。


兵士M「このアマッふざけやがって!」


と言っているあいだにもトラックは最前線へと走っていく。

指揮所では、リィズ少佐が補給物資受取書にサインをしています。

リィズ「ん?なんだこの紙切れは」

手書きで走り書きがしてあります。


”乙女のキッスは100トン爆弾よりも破壊力があるか否か?” 


リィズ「!!!」


くしゃくしゃっ!


リィズ「誰だ!こんなメモを書いたバカモノはっ!?」

   「許さーんっ!」


またリィズ少佐の顔が赤くなってます・・・

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