27
リウイが招かれたライラの家は、他の村人たちの家となんのかわりもない家だった。木でできた、素朴な家ダなぁ。それがリウイの感想だった。
家のほとんどは、村の近くに生えているのであろう樹木を使ってあり、鉄骨など金属の類はほとんど使われていなかった。
(でも……ナンだか変だナァ)
リウイには不思議な違和感があった。ただそれを具体的に言葉にするのは難しかった。しいて言えば、他の家と、違いがなさすぎる。同じ時期に同じように建てられたような家だった。
少し広めのリビングに、大きめのテーブル。椅子は4脚ある。その一つを勧めながら、ライラは少し恥ずかしそうに笑った。
「あなたは、スカイ様と一緒に旅をしてるのよね。ってことは王都から来たのかしら。ごめんね、粗末な家で」
きょろきょろあたりを見回していたリウイだが、勧められるがままに椅子に座り、リウイはにっこりと笑う。
「ボクはリウイ! ……あ、えっと、そうじゃなくて、ボクたちだいたい宿トカに泊まってるカラ、人のおうちが珍しいッテいうか……ライラは、一人で暮らしてるの? こんな……広い家で? 」
実際、ライラの家は一人暮らしにしては広すぎるように見えた。誰か家族と……たとえば恋人と住んでいるとしたら、ちょうどいい大きさなのだろう。
「そうね、一人には広いわよね」
ライラの微笑みは、寂しそうだった。事実リウイには、泣いているようにも見えた。リウイにしか見えない、いつも楽し気に踊る精霊たちが、この家には一人もいないことも要因のひとつかもしれない。
ほう、とため息をついたのはライラだった。
「私、恋人を待っているの。町に出稼ぎに行って……それから、もうしばらく帰ってきてないわ」
「ゴ、ゴメン」
「いいの。……たぶん、捨てられたわけじゃあ、ないから。お茶、いれるね」
その微笑みは実際、泣き顔にも見えた。ライラは俯いて、もう一度大きくため息をついてから、キッチンに向かう。
リウイは椅子にすわってしゅんとしながらも、やはり人が定住する家というものを観察していた。明かりのともされたランプ。ちりひとつない本棚。籠にまとめられた洗濯物。空のバスケット。
やがてドタバタと戸棚を開け閉めする音がして、キッチンからひょっこりライラが顔をのぞかせた。
「リウイちゃん、ごめんね。お茶、切らせちゃってるみたい」
「あは、イイヨ。ボク、見ての通り猫舌だし」
リウイのジョークに、ライラは今度こそ本当の笑顔を見せた。そして、水差しの水をグラスに注ぎリウイに差し出した。
「お水しかないけど……ねぇ、よかったら、リウイちゃんとスカイさんのこと聞かせてくれない? 私、外の世界に興味があるの。リウイちゃんみたいな……変わった人、外にはたくさんいるのかしら? 」
ひくひくとリウイは耳を動かしておどけてみせる。
「ボクみたいなのは、スクナイと思うよ。あんまりお話、上手ジャナイけど……聞いてくれる? 」
「ええ、もちろん! わたしも聞くのは上手じゃないけどね」
ライラははじけるような笑みを見せて快諾する。
「ボクはね、ズーット東にアル、ココみたいに普通の村で、ニンゲンのお父さんとお母さんの間ニ生まれタンだ……」
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