第3話 新国立闘技場
異世界に召喚されてから3ヶ月が経った。
俺は今、剣闘士の聖地である新国立闘技場の地下にある控え室にいる。
なんでそんなとこにいるんだって?
ま、なんやかんやあれから色々あったのよ。
まず始めに牢にぶち込まれた。そして、そこでFLM3281という名前を付けられた。次に身体測定を行い、その結果をもとに職業を決められた。で、晴れて剣闘士になった。簡単に説明するとこんな感じだ。
なお、剣闘士っていうのは別に特別な職業って訳じゃない。ガーベッジは大半が剣闘士か治験の被験者だ。剣闘士は魔法使いの攻撃力測定や見せ物として使われる。治験の被験者は治癒魔法の効能測定に使われる。魔法をかけられる対象という意味では大体同じで、死亡率もほとんど同じくらいだ。他には運が良ければ奴隷になれる奴もいる。
俺はそこそこ体格が良かったので、案の定、剣闘士になっただけだ。一応この3ヶ月間訓練は積んだものの、剣の技量は大したことないと思う。というか魔法相手に剣で挑むのは無理があると思う。幸い相手の魔法使い1人に対し、こちらはチームとして15人で挑めるのが唯一の救いか。おっと、コーチが呼んでるのでここで回想終わり。
「いいか!今日はお前らが3ヶ月間鍛えた成果を見せるときだ!必ず勝て!気合いで負けるな!剣が折れたら体でぶつかれ!腕がもげたら頭突きしろ!15人いるんだ、死ぬ気でやれば1人くらい勝てる!ガーベッジの意地を見せてみろ!」
「っしゃあああ!!!!!」
みんなで円陣を組みながら気合いを入れる。3ヶ月前は引き込もりだったとは思えないくらいの体育会系っぷりだ。
「よしっ、それでは並べ!」
コーチの合図と共に俺たちは柵の前に4列に並んだ。
これは15人を4:4:4:3の4つのチームに分け、前後左右から相手を攻める作戦だ。
ちなみに俺は敵の右側から攻撃するBチームに所属している。
「いいか!最初は四方に展開するまで守りを固めろ!相手が勘付いて各個撃破に及んだらすぐさま牽制しろ!忘れるな!」
コーチの声が響く。忘れる訳もない。この時のために死に物狂いで修練を積んできたのだから。
「では、開門します。」
門番がついに扉を開けた。
「うおおおおお!!!!!!」
全員で雄叫びを上げながら闘技場に突っ込んでゆく。ここまでは訓練通りだ。まずはこの怒涛の雄叫びで相手を少しでも怯ませる。
次に、四方に散らばる。これも問題ない。相手は少しびびってるのだろうか。全く動く気配がない。
「きええええええ!!!!!」
俺は訓練通り少し甲高い奇声を発した。
これは相手の注意を引きつけるためで、実際に攻撃する訳ではない。
Dチームが後方に回り込むまでの単なる時間稼ぎだ。
「きええええええ!!!!!」
俺は念押しするかのように剣を空高く構え、再度奇声を発した。相手の注意を逸らす訳にはいかないからだ。
「はいいいいいい!!!!!」
今度は敵の真後ろから声が聞こえてきた。これは相手の左方に回ったCチームの雄叫びだ。
「いやあああああ!!!!!」
「チェストオオオ!!!!!」
前方のAチームと後方に回ったDチームからも掛け声が聞こえる。
作戦成功だ。完全に取り囲んだ。
だが、真ん中の男は囲まれたというのに、全く動揺していなかった。それどころか、顔を手で覆いながら高笑いしている。
「あはははは。面白いねぇ、君たち。この程度の戦術で僕とまともに闘えると思っているのかい。」
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