第7話 俺に友達は必要ない!
僕の精神はお父さんの一件もあり、安定し切っていなかった。
そして今、僕は唯一の友達失った。今回に限っては完全な僕の失言であると自覚もしている。
本当に八つ当たりもいい所だ。
「は?何それ。何生意気がってるんだよ!」
当たり前だ。良かれと思い話しかけただけなのに対し、急に罵られたのなら誰だって腹を立てるに決まっている。
でも…
「は?喋りかけんなって言ってんの!」
ごめん。本当にごめん。
「近寄るな!毛皮らしい」
今は一人にして欲しい!頼む!
「てめぇー!いい加減にっ!」
ついに堪忍袋の緒が切れたのか、拳を大きく振るい上げる彼の姿に目を瞑ろうとしたその時、衝撃的な光景を目の当たりにした僕は驚きを隠しきれなかった。
周りの生徒がその拳を止めてくれたのだ。
「え…!?あ、ありがっ…!」
僕を庇ってくれた事に「ありがとう」と言いかけたが、それは次の生徒の発言によってかき消された。
「こんなやつ相手にするなって」
「こんなやつの挑発に乗るのは良くないって」
【こんなやつ】か、初めて言われた。いい響きじゃないか。みんなが一般市民なのだとしたら僕は鬼か何かなのだろうか。何にしろ市民の敵である事には変わりない。
僕は開き直ることに決めた。鬼なら鬼らしく大いに振舞ってやろうと。そう決意した。
それからというもの、僕は見事に立派ないじめっ子として成長した。この時の僕は完全に理性を失っていた。感性のままに一人でも多く、僕のような不幸な人間を増やしてやりたい。それだけを考えていた。筆箱を川に投げ入れたり、友達関係を引き裂くようなデタラメな噂話を全校にばらまいてみたり、様々な先生を鬱にさせたりなど、小学生にしては大したいじめをやってきた方だと思う。
結局いじめっ子から抜け出すことは無く、学校唯一のいじめっ子という名を背負ったまま僕は小学校を卒業した。
そして俺の中学生活が始まった。
最初に今の俺から結論を述べておこう。この中学三年間が今までとは比にならない程の不幸のクライマックスと化す。
そして彼女との出会いがまた俺を不幸にするのだが、この時の俺はまだ知るよしもない。
精神的苦痛も治まりかけてはいたが、中学校でも俺は鬼の役目をすると決めていた。理由は一つだけである。当然小学校が同じだった連中も大半がこの中学校に入学してくるわけで、そんな中、鬼が必死に足掻きもがき一般市民を装ったところで、過去の俺を知っている連中は何を思うだろうか。受け入れてくれるだろうか。努力するだけ無駄だということは分かっていた。ならば徹底的に役目を果たし通すべきだと俺は思う。とはいえ、他校からもこの中学校に入学してくるとなると、これまで以上の生徒を敵に回す事になる。さすがの俺も少し気が引けた。
入学式当日、俺は隣のヤツから虐めていこうとあらかじめ決めていた。理由は極めて簡単だ。一番いじめに手間をかけることができ、ソイツに同情するヤツ、そしてまたソイツに同情するヤツ。と、樹形形式のようにじわじわと虐めを広げていくことができる。何事においても最初は肝心だが、虐める上でも最初というものはとても重要な事なのだ。こんな事を毎日飽きずに考えていた過去の俺には流石の俺も心底幻滅する。そして、俺は隣のヤツの名前を確認した。
ちなみに俺は一年二組、一番後ろの窓側の席だった。虐めるにあたってはベストポジションの場所だ。
えっと、隣のヤツは…
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