ニートとお別れです

 「え?ねぇ、本当にこれで終わり?」


 「だな」


 「嫌だよ。私、もっとサクと……」


 「何言ってんだ。お前はずっと、元の世界へ戻りたかったんだろ」


 「そうだけど……」


 ハルが寂しげに俯く。


 あの屋台で手に入れた鍵は、まさかの転移の鍵だったらしく、突然だがハルは、元の世界に戻ることになった。


 「まさか、一発で見つかるなんてね」


 「そうだな……」


 「……」


 「あぁぁもう!しんみりすんなや!帰れるんだ。笑え」


 サクがガシガシと頭を搔きむしる。


 「笑えって言ったって」


 「本気出せば、また会えるさ」


 「え?」


 「転移の鍵は何度か使えるものが多いからな」


 「何度か?」


 「鍵は、その能力の大きさによって、仕様回数が決まってる。転移はショボくはないが、そこまで大した能力じゃないからな。複数回は使えるだろ。とはいえ、上限がきたら急に壊れるから、後何回使えるかはわからん。一回で壊れるかもしれんし、そもそも既に複数回目かもしれんしな」


 「そっか……でも、また会えるかもしれないんだね。よかった。一生の別れかと思ったよ」


 サクがハルを不思議そうにマジマジと見つめる。


 「ん?なに?」


 「いや、なんかお前強くなったな」


 「そうかな?」


 ハルが照れ臭そうにしている。


 「ああ。強くなった」


 「あ、ありがとう」


 今度は言ったサクも照れ臭そう俯いた。


 「まあ、なんだ。元気でな」


 「うん……。サクも」


 ハルが鍵を扉にに近づける。


 鍵にも色々と種類があるらしく、今回手に入れた鍵は扉に直接使用するらしい。扉そのものをゲートへと変換する仕様だ。


 「サク本当にありがとうね。またいつけお礼するから」


 「バカ。戻ってくんな。やっと明日からゆっくり寝れるんだ。だいたい、また帰れなくなったらどうする。おれが行ってやる。」


 「フフっありがとうさく。早く仕事見つけなよ」


 「うるせぇ!」


 「じゃあ、本当にバイバイ」


 「ん」


 ハルが鍵の頭のスイッチを押し、扉に当てて捻ると扉が赤色に変色した。


 「じゃあね」


 ハルが名残惜しそうに口にする。


 「わかったから。早く行け」


 ______ガチャッ


 ハルが扉をくぐっていったのを見届け「じゃあな」と、サクが小さく呟いた。

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