フクロウなんて……
バル@小説もどき書き
無敵の力?
皆さんは梟という鳥をご存知だろうか?
僕の話をするにあたって“フクロウ”について少しは知っていてもらいたいと思ったのだが説明が面倒なのでどうしても必要になったら説明することにする。
簡単に言ってしまえば僕はフクロウの力を手に入れた、ということになるのだろうがそれは正しくないし僕はこれを読む人には事実を知っておいて欲しいのでこう言い直そう。
僕はフクロウの伝承として語り継がれてきた部分の力を手に入れた。
気にしない人は気にしないだろうが僕的にこの違いはとても大事である。前者の言い方だとフクロウの生態的なものを手に入れたようだが、僕が手に入れたのは力の方であって生態ではない。
話が逸れてしまったようだが、詰まる所、僕の手に入れたフクロウとそれにまつわる話をここに記すのでこれを読みこのようなことがあったということを知っておいて欲しいのだ。そのためには僕の1日を順を追って話すのが一番だろう。
まず、朝目覚める。僕にとって寝ることは不要だが今までの生活に慣れていたので寝ているに過ぎない。“不苦労”である。覚醒状態で活動することに苦労しない。つまり、眠気も疲れも一切ない。朝になって決まった時刻に目覚めることにすら苦労しない。
こんなんでも学生なので登校中。
「今日も来たのか。毎日毎日よく懲りない一な」
一日一人、僕を殺しに来る。僕の力は僕を殺した者に移る、と暗殺者の一人が言っていたのだがそれは本当らしい。わかるのだ。彼らの拠点がどこで何時ぼくのことを殺しに来るのかまで、全てわかる。知恵の“袋”で大体のことは分かる。そこにエジプト文明での「神秘の精霊」という危険を予知する預言者の力が相まって全知のようなものを得ている。
僕はいつも通りゆっくりと、一歩ずつ近づいて行く。拳の届く範囲になれば一発殴って終わりである。それで終わりであるのだが相手の武器は剣。リーチが違う。左の肩口から右の腰にかけてスッパリと切られた。次に右から左へ腹を真横に切られた。右腕を肩から切断された。首を切断された。僕の体はバッタリと仰向けに倒れる。切られた箇所からは血が吹き出す。1メートルぐらい。刺客は僕の上に跨っている、というか馬乗りになっている。剣を構える。心臓を貫くつもりであろう。僕は生き残っている左手で刺客の右頬を殴る。それだけで僕の勝ちだ。こいつらには僕の能力は通用しない。攻撃に使えるような力はほぼ無効化されてしまうのだ。刺客相手で僕が使えるのは身体強化と回復ぐらいである。身体強化は刺客を一撃で葬れる程度だが、回復の方は自信がある。首を切られて心臓を抉られて潰されでもしない限り、死なない。
「制服も真っ赤になっちまったし、もうこんな時間か。こりゃ完全に遅刻だな」
取り敢えず着替えてから学校に行き、下校。食事も必要ないが気分的に食べる。そして、寝る。これがとある1日だった。この日はフクロウの力は半分も使っていないが、まあ、こんなところだ。
でも、こんな日常は面白くもなんともない。毎日毎日同じことの繰り返しだ。何か夢中になることがあっても睡眠も食事も必要ないのですぐに終わってしまうのだ。
ここまでが今までの話。
ここから、この次の日から“いつも通り”が変わってしまった。
次の日、刺客襲来。今日ばかりは流石に逃げた。一日一人の法則は途絶えてしまったようだ。武器はガドリング、マシンガン、ロケットランチャー。一撃で脳と心臓を破壊されてしまえば僕であれ生きてはいられない。しかも連射できる銃なのだ。数打ちゃ当たる方式で僕は蜂の巣だろう。取り敢えず家に帰った。家であった場所に。僕の家は破壊されていた。こうも刺客の数が多ければ逃げ切ることは不可能だろう。隠れられる我が家もない。奴らの居場所は分かっている。僕はそこへ向かった。“不苦労”のおかげで難なくたどり着けた。
僕を出迎えたのは仮面で顔全体を隠している一人の男。僕には分かる。こいつが僕のところに刺客を送っていた人物だ。つまり、こいつを倒せば全ては終わる。僕はいつも通りゆっくりと、しかし一歩ずつ確実に近づいていく。痛みは感じないしすぐに回復できるのでできる技だ。奴の方から、僕の脳天と心臓めがけて何かが飛んでくるのが見えた。見えたのでかわすことが出来た。つまり、
「お前相手なら僕の力は余すことなく使えるみたいだな」
「そのかわり、私は君の“不苦労”と同じような力を持っていてね。君を殺すことに苦労しないんだよ」
言い終わるが早いか行動の方が早いか、奴は僕の目にも留まらぬ速さで動いた。動いたことしか分からなかった。僕が次に見たのは天井。次に一面の赤。赤以外何もない。嗅覚と味覚でその赤い液体が何か分かった。血である。奴の先程の動き、僕の頭を首から切り飛ばしたのだろう。僕の頭は地面に転がりその上に首から噴き出した血がかかった。恐らくそんなところだろう。何より一番まずいのは僕の回復能力は一番体積の大きいところで発動する。頭でもなんでも生えてくる。しかし、それは無くなった部位が消滅していることが絶対条件。今は頭が残っている。この場合はくっつければくっつくという程度でしかない。
「確かにお前の回復能力は見事だ。しかし、心臓と脳のどちらもを破壊してしまえば、どちらかが回復する前に破壊してしまえばお前は死ぬ。そうだろう? つまり、だ。今お前の体の正面の方から貫通している剣の刃先に、地面に転がっているお前の頭を突き刺せばどうなる? 眉間から後頭部にかけてあの剣で貫いてしまえばどうなる? 剣が貫いているということはお前の心臓と脳は少なからず破壊されているということだ。そして、完全ではないといえ破壊しているということは時間はかかるがお前はじきに死ぬということだ」
僕はその男に心臓と脳を破壊された。なにかの拍子にこの、僕の心臓と脳を同時に貫いているこの剣が抜けでもしない限り回復は無理だろう。仮面を外す音がする。手を下ろす音は聞こえないので仮面を少しずらして僕を見ているのだろう。聴覚だけはまだはっきりっとしている。
「私が何故お前を殺すのか教えてやろう。お前はお前自身も気づかないようなところで自らの死を望んでいたのだ。恐らくこんなところだろう? なんでもできるのは面白くない。しかしながらこのような絶大なる力を他人に渡すわけにはいかないと。だから私が来たのだ。私は……」
そこから先は聞き取れなかった。体の力が抜け何も考えられなくなって。意識を保てなくなって。眠くなって……
「死んだか。お前が死んだということはお前の未来であるこの私もじきに消滅するだろう。これでフクロウの力は誰にも渡らない。さらばだ。過去の私よ。」
カタン。
その場に仮面が落ちた。
フクロウなんて…… バル@小説もどき書き @valdiel
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