エージェント・フクロウ

木船田ヒロマル

神は天にあり、その威を地に知らしめす

「くそっ……もうダメだ! 世界は……終わりだ……」

「まだよ」

「しかし……!」

「まだ、彼は諦めていない」

「彼?」

「そう……私たちの切り札。我が国最高の問題解決能力を持つ合衆国国家安全保障局付き国連事務総長勅任特別脅威査定情報収集実力執行官」

「我が国最高の問題解決能力を持つ合衆国国家安全保障局付き国連事務総長勅任特別脅威査定情報収集実力執行官? ま、まさか‼︎」

「彼の名は──フクロウ! エージェント・フクロウ!」



*** エージェント・フクロウ ***

* ジ・オーディンズジャッジメント *


「ホロッホー」


「…………」

「彼は『待たせたな』と言ってるわ」

「彼?」

「ホロッホー」

「彼は『任せろ。核攻撃報復の連鎖は、俺が止める』と言ってるわ」

「フクロウ?」

「そうよ」

「エージェント・フクロウ?」

「そう言ったでしょ」

「ホロッホー」

「彼は『驚くのも無理はない。訳あってこんな姿だが、ただの鳥じゃないから心配するな』と言ってるわ」

「本当か」

「ええ」

「何故あんたは彼の言葉が分かるんだ」

「私は我が国最高の問題解決能力を持つ合衆国国家安全保障局付き国連事務総長勅任特別脅威査定情報収集実力執行補佐官として特別な訓練を受けているの」

「我が国最高の問題解決能力を持つ合衆国国家安全保障局付き国連事務総長勅任特別脅威査定情報収集実力執行補佐官として特別な訓練を?」

「ええ」

「…………」

「ホロッホー」

「そうね。状況を説明して」

「分かった。ここ、南ザンスは冷戦時代から続く内戦でガタガタだった。山岳地帯を支配する『輝くザンス開放戦線』を名乗るゲリラは現政府を西側諸国による傀儡政権だとして認めず、選挙を茶番だとして妨害や要人襲撃を繰り返し……」

「分かったわ。我が国の駐留基地への核攻撃を防げばいいのね?」

「まだ話は途中だぞ」

「私は我が国最高の問題解決能力を持つ合衆国国家安全保障局付き国連事務総長勅任特別脅威査定情報収集実力執行補佐官として特別な訓練を積んでいるの。限られた情報からでも全容を正確に推察できる」

「マジか」

「ホロッホー」

「彼は『つまり、ラ・マスト・デレバヴィランテ……火薬アリの巣、と呼ばれる反政府ゲリラのアジト深くに潜入し、奴らが東側から秘密裏に手に入れた旧ソビエトの負の遺産……車両発射型ICBM"オーディン02"の発射を食い止めればいいんだな』と言ってるわ」

「鳴き声に対して訳した後が長くないか」

「彼は我が国最高の問題解決能力を持つ合衆国国家安全保障局付き国連事務総長勅任特別脅威査定情報収集実力執行官として特別な訓練を積んでいるから」

「マジか」

「マジよ」

「ホロッホー」

「彼は『行ってくる。シャンパンを冷やしておいてくれ』と言ってるわ」

「フクロウってアルコール大丈夫なのか?」


***


「ホロッホー」

「彼は『行ってきた。もう大丈夫だ』と言ってるわ」

「早くね?」

「彼は我が国最高の問題解決能力を持つ合衆国国家安全保障局付き……」

「あー、分かった分かった。特別な訓練を積んでるんだな。OK OK」

「ホロッホー」

「彼は『苦しい戦いだった。輝くザンス開放戦線の連中は予想より遥かに高度に訓練されていた。武装も金が掛かってる。東側だけじゃない。西側の高価な銃器も沢山見かけた。決定的なのは、ICBMこそ情報通り旧ソビエトのものだったが、それをメンテナンスし、合衆国の基地に向けるデータ入力をしていたのがアメリカ人の技術者だということだ。この事件、単なるゲリラの暴走じゃない。裏で糸を引いているのはラングレー……C.I.Aの連中だ。急いでここを引き払って身を隠せ。作戦が失敗し、黒幕の正体が露見した今、奴らは形振り構わず事件の真相を知る者たちを消しに掛かるぞ』と言ってるわ」

「え……それ俺に言わなければ俺は逃げ隠れしなくて済んだんじゃ……」

「…………」

「…………」

「なんとか言えよ」

「ホロッホー」

「『また会おう』」

「いやもういいよ」

「ホロッホー」

「彼は言ってる。『最後に一つだけ言っておく』」

「彼は……なんと?」


「『俺は、ミミズクなんだ』」

「ミミズクなのかよ」


*** エージェント・フクロウ ***

* ジ・オーディンズジャッジメント *

*** MISSION COMPLETE ***

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エージェント・フクロウ 木船田ヒロマル @hiromaru712

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