「灰色に鳴る」四合目:悪童餓鬼の因縁は断ち切れない
橋倉崇仁は夕刻、山道の途中で、曇天を仰いで立ち止まる。
じめじめと湿った空気の中に、馬鹿なことをしているなと吐息を漏らした。
がしゃんと防具袋と竹刀袋を乱暴に地面に下ろし、坂に腰掛ける。八月の気温に汗が滴った。ハンカチなんて上等なものは持っていないから、獣のように首を素早く振って汗を払う。
「……ちっ、何でいっつもこんなに重めーんだ。死体でも入ってやがんのかよ」
己の防具に呪詛を吐きかけ、橋倉はがしがしと焦げ茶の髪を掻く。稽古をしていてもいなくても、剣道具という奴らは忌々しい。
八つ当たるように、橋倉は麓に向かって唾を吐きかける。
そのとき崖下に、自分の出発点である御剣館の道場が見えた。
「は。まだ、こんなに低いのかよ」
絶望的な事実なはず。なのにそのときだけ、なぜだか笑えた。
不意に、雨を匂わせるような冷たい風が吹く。かなかなかなと、夏の死を匂わせるひぐらしが鳴く。曇天も相まって不気味なそれらはまるで、引き返せと脅す磨羯の嗤い声のようだ。
「……もう、遅えよ」
橋倉は立ち上がり、下を見ることをやめて天を見る。
悠か頂上は、曇天の中にあって未だ見えなかった。
「行くか」
呪わしくさえある防具袋を重荷の如く背負い、がしりと竹刀袋を左手で強く握る。
壊れてしまえと、憎しみをぶつけるように。
「……下に、捨ててくりゃ良かったんだ」
橋倉は灰の眼を閉じて、再び山を登り出す。
そもそも、どうして自分は登っているのか。どうして剣を手放さないのか。
纏める問いかけは、たったひとつだ。
――馬鹿じゃねーのか。そんなにも、剣道が好きかよ。
自問自答の答えは、決まっている。
「……クソ食らえだ、こんなもん」
――好きって、絶望だよね。
橋倉は遥か昔、誰にも馴染めない教室の隅で読んだ小説の一節を思い出していた。
× × ×
何もかもが憎かった。
自分を取り囲むもの、全てが。
『死ね』
親の都合でしばらく滞在していた海外から帰ってきて、幼い橋倉崇仁がすぐに覚えたのは、憎しみをシンプルに形にできるその言葉だった。
海外帰りという記号。親譲りの焦げ茶の髪に白い肌。整っているらしい顔立ち。
何より、狼のようだと称される灰色の瞳。
ある程度年齢を重ねれば特徴として受け入れられ、また特長として持て囃されるその姿は、当時は下らない奴らの格好の排斥の的だった。
異邦からやって来た者に、狭量な餓鬼どもは石を投げてくる。
『狼』『化物』『鬼みたいだな、おまえ!』
まだ慣れぬ言葉は分からぬだろうと、奴らは罵詈雑言を並べ立てる。泣けと言うように。
だが、心は微塵も痛まない。涙は決して流れない。
第一、言葉が分からなくてもいい。拳に脚にそれから牙は、何より簡単に意志を伝える。
『死ねッ!』
血と暴力の中で、いつも怒りを吠えていた。そうすると皆は言う。
殴るな。蹴るな。噛みつくな。暴力は良くない。手を繋いで仲良くしろ。
ふざけるな。友達になってくれだなんて、天地が返ろうとも思うはずもない。
なのに味方のはずの両親も、あまりに的外れなことを言う。
『おい崇仁。少しぐらいは、友達と……』
『うるせえッ! おめーらも、あいつらの肩持つのかよ!』
――悪いのは俺じゃない。あいつらの方だ!
決して迎合しない。奴らの中に己を堕するという選択肢だけはなかった。
奴らに劣っている部分が許せない。言葉を取り戻す方法として、姉から本を教わった。
そうして誰とも話さず教室の片隅で本を読み、遅れた言葉を取り戻す。
本は自分を守る結界だった。侵してくる奴はみんな噛みつき、殴り飛ばしてやった。
報復に来たら、また暴力で済ませる。そうやって、独りで居られる場所を守った。
一匹狼でいることに、誇りを持つ。拳が血に濡れない日など一日もなかった。
『――崇仁。私に、着いてきなさい。反抗は許さない』
そんな自分を見かねたように、ある日、姉は同じ灰の瞳で睨んできてそう言う。
拳をかざした訳でも、いつものように悪辣な言葉を並べ立てている訳でもない。
だが、つい唾を飲み下した。
初めて向けられた姉からの殺意は、あまりに怖くて、それからなぜか脊髄が痺れて。
『……分かった』
誰かの後を追うことを何より嫌う自分が、素直に頷いて同胞の背を追った。
そして連れて行かれた場所。そこは、人の棲む場所ではなかった。
弾ける剣戟の音。獣のような叫び声。地に人を叩き伏せるような踏み込みが、床と同時に自分の心臓をどくんと揺らした。
『ここは……?』
『石動剣友会。六大道場よ。……私の通う剣道場で、『竜の棲む穴』と呼ばれているわ』
立ち尽くす自分の目の高さに合わせるように、七つも年上の姉はかがみ込む。
そして両肩を強く持って、言った。
『お前は、ここに入るの。辞めたいと言っても許さない』
手が着けられないから、寺にでも入れるつもりだったのか。それとも千尋の谷に突き落とすつもりだったのか。分からないが、どちらでも構わないと思った。
姉だけだった。
姉だけが、逃げずに同じ灰の目で、自分の目を見てくれた。
だから殴るのではなく、この人に教わった言葉に耳を傾けてやる気になった。
『ここでなら、好きなだけ暴力を振るってもいい。ただし、剣を使うこと』
『……剣』
『そう。ちゃんと礼をして、竹刀を使って、決められた道に則り相手を打ちなさい。それを守れば、過ぎた暴力でも強さとして肯定されるの』
姉は、お願いだそうしてくれとは言わなかった。
命令口調で言い切った。
これから辛い目に遭うことを、全部私のせいにしろとでも言うように。
『いい、崇仁。学校にお前の味方はいないかもしれない。これから先きっと理解者が現れるから我慢しろだなんて、無責任なことも言わないわ。……けれど最低限、守りなさい』
『……何を?』
『礼と、規則よ。世の中、誰も守ってなどくれないわ。背中を見せれば斬られるのが当たり前。けれどこの二つだけは、守る者には必ず味方するようにできているの』
姉の使う言葉は、難しくてよく分からない。
だが、血が通っていることだけは分かる。
『ここで生きていきなさい。もう、学校では暴れるな』
嫌だった。暴れなければ、身は守れない。
そう反論しようとしたところに、道場の奥からひとりの男がやってくる。
『おう、麗奈。そいつか。お前の弟は』
『会長。……はい。ご迷惑をかけますが、どうかよろしくお願いします』
――なんだこいつ。クソ小せえじじいじゃねーか。
石動剣友会の長だと呼ばれた男は、皺の多い、簡単にくびり殺せそうな老爺だった。
女性の中では身長が高い姉だが、それでも女性より背が低い。
どうしてこんな雑魚に頭を下げているのか、甚だ理解に苦しんだ。
『おい、麗奈の弟よ。名は?』
『…………』
『崇仁。答えなさい!』
『……今、おめーが言っただろうが』
『はっは、なるほどな。……こいつぁ、鍛えがいがある』
顎に仙人のような髭をたくわえた会長とやらは、懐かしむような目をしてこちらを見てきた。
『たかひととは、どういう字を書く。ん?』
『……るせえな。書けねーよ』
『崇い、仁と書きます。尊ぶ、という意味の崇いです』
姉が、代わりに答える。
彼女の言葉はまた難しくて、そのときの自分に、その祈りの意味を知ることはできなかった。
『そうか。……いい名だ』
初めて、他人に下の名前で呼ばれる。
それが聖域を侵されたようで気に入らない。
『今日からここは、お前の家だ』
そして、勝手に同胞を語られたことが最も気に入らなかった。
『触んな! 死ねッ!』
己の肩を叩こうと差し伸べてきた会長の手を、思いっきり殴り飛ばす。
ほら、簡単だ。こんな老爺はすぐにでもくびり殺せる。
会長だが何だか知らないが、餓鬼の拳ひとつ避けられやしないじゃないか。
『崇仁っ!』
『やめろ麗奈。……いい』
姉を静止し、老爺は笑う。近くにあった竹刀を差し出してきた。
『くれてやる』
『………………』
『刀だぞ。おめえのような手合いは好くだろう。ん?』
癪だが、差し出された竹刀を強く奪い取る。
子どもの自分には長い、三八の竹刀。
柄を握ると、原始的な高揚があったことをよく覚えている。
『明日から、ここに来い。おめえがそれで俺を打てる日が来たら、出ていっていい』
『……は。今すぐに――!』
動けなかった。
会長は、目を細めただけだ。それでも感じたことのない恐怖が身を貫いた。
――殺される。
身体が震えて、振りかぶろうとした手を止める。そうしていると会長は笑った。
『分かりやがったのか。筋があるな』
『くっ……!』
『学べや、崇仁。……俺は魔法を使ったわけじゃねえ。人の為すことは、人に為せんだ』
会長は、親指でとんとんと皺だらけの首を叩く。
『殺れるまで、まずはやってみろや』
言葉は返さない。だが、やってやるとそのとき決めた。
学んでやる。その骨と皮しかない身から、神髄をしゃぶり尽くしてやる。
そして、用済みとなった、そのときは。
――おめーの教えた剣で殴り殺してやるよ、じじい。
姉が、再び頭を下げ身体を曲げて声を出す。
『よろしくお願いします』
従い、無言で首だけ下げた。
牙を光らせ、目を伏せず、決して睨むことを忘れずに。
剣道を始めると、すぐにのめり込んだ。
剣を振るという行為は血が滾る。叫んで相手をぶった斬れるとたまらない。
礼だの規則だの、うざったい風習は気に入らない。
『……しゃす』
だが、従ったフリさえしていれば後は自由に何でもやれる。相手にありがとうございますだなんて思ったこともない。形だけいつも頭を下げていた。
――利用してやる。全部自分のためだけに。
腐った学校以外の時間を、全て剣に捧げた。
石動の稽古は常軌を逸していたが、それでも良かった。
道場では、暴力を振るえば振るうほど賞賛される。自分より強い奴が、すぐに自分より強かった奴になる。着いた腕前は決して裏切らず、煩わしい人間関係など一切考えなくて良い。
性格も環境も遺伝子も、自分は何もかもが剣道に向いていた。
だからそのときは、剣道が楽しく、何より愛していたことに間違いはない。
剣道の、一番好きだったところ。
それは、この場所では出自も年齢も肌の色も、何も意味を成さないところだった。
忌々しい肌も嫌いな髪も瞳も、胴着に着替えて防具を纏えば全て隠してしまえる。
ただ強さこそが己の証明で、この腕一つがそのまま自分の居場所となる。
『おら、どけよカス。負けたんだろーが』
『くっ……』
爽快だった。敵を斬るたびに愉悦で唇が歪む。
己が数段高みに登ると、自分を見下し石を投げてきた奴らが紙屑に見える。
それを簡単に裂くのが、何より心地良かった。
根暗な自覚はある。だが、それが何だと言うのか。強ければ性格など関係ない。
『全員、ぶっ殺してやる』
受けた恨みは、決して忘れない。
顔も名前もやられたことも、自分は全て覚えている。だからこの場所で出会えたが最後、必ず無惨に全員殺してやる。
『くくくっ……』
身体が大きくなる。声が変わる。そして何より、群を抜いてはぐれて強くなる。
中学に入る頃には、既に周囲では敵なしになっていた。
そしてその頃、唯一の枷が消えた。
姉が、進学で故郷を離れていったのだ。
『へっ。ようやく邪魔者が消えやがった』
見る者がいなければ、何をしてもいい。見つからない悪行を誰が裁く?
『ようやく、やれる』
好きにやった。
するなと言われた喧嘩もしたし、優れた容姿に寄って来る、薄い女も簡単に食った。
恥ずかしい話だが姉に負けず劣らず自分も悪食で、そして簡単に捨てていた。
『このクズ!』
『へ。……うるせえ』
世の中に、石を投げられた。
『クズはおめーらのほうだっただろうがッ!』
だから自分にも、石を投げ返す権利があるはずだ。
そう信じて、たくさんの復讐に走った。思い出したくもない。
そんなことをしていると、剣への情熱は失われていった。
せっかく天与の才があったのに、腐らせて。けれどそれでも周りが悪いと当時は信じた。
なぜならそんな自分にさえ、同じ歳の奴らは勝てなかったのだ。
『崇仁。稽古に、来いや』
『うるせえ。そんな暇あったら、他のカスどうにかしてろ』
会長には勝てないままだったが、特に敗北感はなかった。
己を磨いて、今すぐ殺そうとは思わなかった。
『けっ。じじいが、さっさとくたばりやがれ』
今勝てなくても、奴は勝手に死に衰えていく。なら時が来たら殴り殺してやればいい。
『喰えるときに、喰えばいいんだ』
人として正々堂々なんて、鼻で笑える。
どんどんねじ曲がって、取り返しがつかなくなって、時が過ぎていく。
『最後にどっか、一個決めて終わっとくか……』
丁度厳しい稽古にも嫌気が差してきた、中学二年の頃だった。
人を斬りたいという黒い衝動が、山を登れと内に囁く。従ってやることにした。
どうして山に登るのか。
それは上から弱い奴を見出すのが、気持ち良くてしょうがないから、だった。
そんな自分を鬼子のように、石動の連中は忌み嫌う。
性格、言動、礼節――下らない難癖を付けて、ついに蒼天旗には一度も出して貰えない。
腹が立って仕方がなかった。どうせ自分の実力を恐れたのだろう。
だが、まあいいと斬り捨てる。姉が言うように、自分の中でも絶対の規則がある。
他人は、自分を受け入れるものじゃない。
ならば、そんなものが関わる場所を選ばなければ良いだけの話だ。
『部活、入れろよ。おめーらは黙って俺っちを個人戦に出してりゃいい。俺っちは自分の目的を果たす。おめーらは全国優勝者が出たって実績を手に入れる。それでいいだろ?』
利害の一致を突きつけて、全中という山に登る権利を手に入れる。
ただそれは、独断専行だった。石動剣友会は六大道場の中で、歴史も体質も最も古い。
そういうことをするのなら、事前に仁義を通しておく必要があった。
『おい崇仁。どういうことだ』
『うっせえな。見たまんまだよ。……こんなクソゲーはもう終わりだ』
老爺は、しぶとい。ならばもはや拘るまい。
ひとつのものを追うだなんて、馬鹿のやることだ。
『辞めるわ、ここ。せいぜいヘタクソ共と傷舐め合ってろよ』
『……入るときに、俺を打つまで出ないと約束したな。あれはどうした』
そう言われて、自室にしまってある、あの三八の竹刀がすぐに脳裏に浮かぶ。
ずっと。なぜだか、ずっと。
あれだけは、くだらないと捨てられないでいた。
それは自分の中に残っていた、僅かな良心がそうさせたのかもしれない。
『へっ。忘れちまったよ、そんなもん』
なのに最後、それを自分で踏み潰した。
『あばよ。もう二度とこんなとこ来ねーよ』
その足で、会長に泥をかける。
無言の彼を振り返らずに、戦いの道具だけ持って家を出た。
愚かしい。このときのことを表す日本語を、本から学んだ言葉で選ぶならこれだろう。
魔が、差した。
そして、予想通り簡単に勝てた全中予選が終わり、本戦当日。
『……剣鬼?』
会場でそんな異名を耳にする。
曰く、剣の天才。御剣の神童。蒼天旗にしか現れない幻の男。
そんな風に称される、目の下に傷のある優男が地上に降り立った瞬間。
周囲がざわめき、誰もが奴を避けていく。だが奴は瞑目し、曇った表情を崩さなかった。
『へえ……』
自分が中二だったからだろうか。なぜか、その大仰な通り名が気に入った。
奴が同じような扱いを受けていたことも、もしかしたら手伝っていたのかもしれない。
――こいつとは、仲良くできるかもしれない。
一目見ただけでそう思わされる、不思議な男だった。
そんな感情を抱いたことは、人生で一度もなかったというのに。
奴と戦ってみたい。纏う雰囲気で分かる。きっと腕も相当あるはずだ。
剣を交え、戦いが終わったなら、今日だけはこちらから声をかけにいってもいい。
『……登って来いよ』
組み合わせ表では真反対。一つ年下だと記された御剣悠の名を見て、なぜか頬が緩んだ。
強かったな。お前もな。そうやって拳を交わし、友となって笑い合う。
背中を見せて、他人に浅はかな夢を見る。
だから。
簡単に、斬り捨てられた。
『どオォォッしゃああああ―――――――――――――――ッ!』
自分は、奴を特別だと思っていた。だが奴は、こちらを何とも思っていなかった。
ただ、簡単に斬り捨てることのできる、薄い紙屑としか。
『胴あり! ――勝負あり!』
『ああ、あ………………』
寒気に吐き気に、それから涙。嗚咽。血液の代わりにそれらが吹き出る。
あまりに切れ味鋭い逆胴だった。
これが本物の化物なのだと、鬼なのだと、無情に突きつけてくるような。
『優勝は、冥峰中学校一年生、御剣 悠選手に決定致しました』
言い訳できない、圧倒的な力量差。それを前にしてどうするか。
至らなかった自分が悪いと、潔く頭を下げるか。……それとも。
『……ふざ、けんな………………』
己を斬った相手を、仇のように憎むか。自分には後者しかありえなかった。
なぜなら奴は、般若の面を取った後、にたりと嗤っていたのだ。
血のように涙を流す自分を見下すが如く、悪辣と。
『……ぶっ殺してやる』
馬鹿にされた。そうに決まっている。他にどんな感情が化物にあり得る。
許さない。この屈辱、絶対に忘れない。
たとえ、どんな地獄を味わったとしても。
『次は必ずぶっ殺してやる、剣鬼ぃッ!』
怨嗟で濁る灰の瞳に奴の姿を焼き付けて、決して忘れぬとその場を去る。
再び奴の前に這い上がってくると、己に誓って。
地獄に堕ちて、剣の腕を磨くことを決める。
だがその前に、居場所を取り戻すことから始めなければならなかった。
後ろ脚で泥を掛けた、唯一自分を受け入れてくれていた場所を。
『どの面ぁ下げて、ここに戻ってきた。崇仁』
十四歳の子どもにも、会長は容赦がない。
老爺とは思えぬ気迫と殺意を持って、舐めたことをした咎を責め立てる。
全くだ。どの面下げて、石動に戻ってくるという。
『……辞めんの、やめます。……だから、もう一回。今以上に稽古、付けて下さい』
正座を突いて、床に頭をこすりつけて土下座をした。
どれだけ惨めでも、奴に斬られたあのときより数倍マシで。
『お願いします……ッ。……どうしても。……どうしても、ぶっ倒してえ奴がいるんだッ』
このまま奴に復讐できずに終わるのは、どんな屈辱よりも辛いことだった。
『顔ぉ、上げろや。崇仁』
『……っ』
『言ってんのは、御剣の坊か』
歯と歯を噛み合わせ、頷きそのまま俯く。そうしていると、会長は言う。
『天才を見たか』
『……は、い』
『分かったかよ。いかにお前が弱かったか。低い次元の、下らない餓鬼だったか』
何も言い返すことができない。それが、歴然たる事実だったからだ。
『今のお前は格好悪い。屑以下の惨めな野郎だ。それを噛み締めろ。死ぬまで忘れんな』
罵倒を受け止め、首肯する。言ってくれるだけありがたいことなのだと、今更分かった。
ややあって、会長は仙人のようにたくわえた髭を触りながら言う。
『崇仁よ。強えって何か分かるか』
『……? あいつみてーに、何でも出来ると……』
『違う。……強えってのは、続けることだ。泥臭くあることだ。格好悪くて弱え自分を認めて、それでもしがみつくことを選べるかどうかってことだ』
『………………はい』
『お前は今、格好悪くてもしがみつこうとした。一回自分で蹴って、唾を吐いたものにだ』
皺のある手が、橋倉の肩を叩く。
意志を持ち触れることに意味があるのだと、そう示すように。
『それが、強さだ。忘れるな。……崇仁。戻ることを許す』
『……は、い』
嬉しくて、情けなくて、涙が止まらなかった。
――生き直すんだ。もう一度。
もうどんなに馬鹿にされても、喧嘩はしない。
人に粗末に扱われても、人を粗末に扱わない。
拳ではなく、この人のように手のひらで。
優しく人に触れられる、人として生きていきたいと心から願った。
『お前は今より、獣から人を目指す。……だったら、仁義は切らなきゃならねえ。分かるか』
無言で頷く、その瞬間。
この門を叩いたときに姉から聞かされた言葉が、ようやくこの耳に届いた気がした。
『お前は礼も規則も、何もかも踏みにじってきた。だが家で、群れで生きる者は、必ずこれを守らねばならねえ。……分かるな。俺は、この家の主だ。お前がここに戻るというのなら、それを踏みにじったものには、相応の罰を与えねば、皆に示しがつかねえ』
『……はい』
礼と規則は、守る者に必ず味方する。
だが、それを犯した者は、いつか必ずその報いを受けるのだ。
『中学を卒業するまで、石動剣友会は橋倉崇仁の対外試合の一切を禁ずる』
『…………ッ!』
檻に入れられる。これから数年、どれほど牙を研ごうとも奴に噛みつくことはできない。
だが、甘んじてそれを受け止めねばならない。
向き合わねばならない。己の弱さと。
そうでなくては、悠か高みに座すあの男を斬ることなど出来るはずがない。
『……分かり、ました……っ』
臥薪嘗胆。雌伏のとき。
石動に戻ると、物言わぬ冷笑と侮蔑の目線が石となって投げつけられた。
針のむしろに心と身体が痛むが、むしろそれでいいと口の中を噛む。
辛苦の味と背負った傷が、憎悪を風化させずにこの身に留めてくれる。
しばし、髪を切る間もないほど、凄惨な稽古で身体をいじめた。
やがて、前髪が灰の瞳の前まで降りてくる。
邪魔だと単に切り捨てる前に、それすら復讐のために利用することにした。
鮮血のような赤を、前髪に入れる。
これが伸びてくるたび、奴に斬られたことを思い出し奮い立つために。
髪に色を入れるなという規則は、剣道にはない。だが皆、それを嫌う。
より一層酷くなる皆の態度に、しかし噛みつくことはしなかった。
『好きに、言えよ』
反省しているから受け止めてくれだなんて、思わないし言うつもりもない。
元より、味方などいない人生。
崖の淵に自らを追い込み、駆け抜けてやればいい。
修羅となり、血反吐を吐いて爪牙を磨く日々が続いた。
やがて、一年の歳月が巡る。
橋倉崇仁が中学三年、御剣悠が中学二年の年。
蒼天旗の季節が二度やってくる。たとえ自らが出られなくとも、全てに足を運んだ。
夏、奴は棄権した。家族の急病によるものだという。
そのとき、虫の知らせのようなものが全身を震わせた。まるで、何かを失うような。
『……阿呆らしい』
そしてその予感は、やはり一笑に付してよいものだと断言できた。
奴は冬、戦場に戻ってきた。
何者も寄せ付けることのない、最強の幽鬼となって。
鬼が、哭いていた。
構えただけで敵が竦んで、咆哮だけで敵が散る。奴が刀を振るうと、必ず三本鮮血が咲いた。
『面あり』『小手あり』『突きあり』『胴あり――勝負あり!』
殺してやりたいほど、剣鬼が憎いはずだった。
だがその一瞬だけ、全てを忘れて奴に見惚れた。
『我ァアあぁあ――――――――――殺ャああぁあアアアッ!』
現実のこととは思えなかった。
日本最強、つまり地上最強の剣士を決める蒼天旗の頂点に、奴は軽々登り詰めていく。
天衣無縫で鎧袖一触、紙屑たちが叫びを上げる。
やめてくれ。やめてくれ。頼む化物やめてくれ――。
地獄の凍土に悲鳴が満ちる。蚊帳の外では拍手が鳴る。
誰かが鉄柵を掴み、悲哀を叫ぶのが聞こえた。
『やめてくれ。みんな拍手をやめてくれっ! この声が聴こえないのか!?』
あの恨みを決して忘れたわけではない。奴に与することなどあるはずもない。
だが、同じく鉄柵を掴んで叫ぶ言葉は、誰かとは違った。
『殺れ。もっと殺れ! くだんねー奴は斬っちまえ!』
身も凍えるような冬だというのに、どす黒く血で沸き立つように臓腑が熱い。
そのまま登り詰めてしまえと、化物の背に向かって檻の中から牙を剥き吠えた。
――これだ。こいつだ。こいつこそが、俺の斬りたい『剣鬼』だ!
最凶だ。最高だ。だからどこまでも悪辣に嗤えと、悪役に光が当たった瞬間、そう願った。
『御剣選手。優勝、おめでとうございます。素晴らしい試合でした!』
『……おめでとう。……素晴らしい? ……馬鹿か、おまえら』
なのに奴は、嗤うどころか虚ろな顔で、己と同じ灰色の目でこう言った。
『……こんなものが、ほしかったんじゃない……』
穢れた地を見捨てるように、その衣を纏って奴は天へと消える。
分からない。どうしてお前が笑わない。
頂点(そこ)で笑わなければ、一体どこで笑うという?
『……まあいい』
自分で確かめれば良い。次の夏の蒼天旗では、自分は高校一年生になっている。
ついに、檻から出られる。奴と直接剣を交えることができる。
心が高揚する。
しかし同時に、稽古で鍛えた強烈な理性と獣の瞳が、冷徹な事実を捉えた。
『……今のままじゃ、勝てねえ』
頑張ったから勝たせてくれだなんて、浅はかだ。
辛い目にあったから報わせてくれだなんて、程度が低すぎる。
あの無情な天才を前に感情論を振りかざすほど、もう自分は愚かじゃない。
稽古の質を、量を、もっと上げなければ話にならない。……そのためには。
『くっ……』
身から出た錆を、落とすしかない。
稽古で倒すべき敵となってくれる奴がいない。稽古の後、付き合ってくれる味方がいない。
自分には足りぬ石動剣友会(このばしょ)を捨て去らねば、もはや前には進めない――。
『会、長……』
『……どうした』
初めてこの人に与えられた竹刀を持って、ふたりきりの、夜の道場に呼び出す。
切り出せば良い。ここを出て行くと。
奴を斬り殺しに行くためにお前は邪魔だから、止めるなら叩き殺してでも出て行く
と。
『……俺っちは』
だが、どの面下げて、それを願う。
一度ならず二度までも、この人に泥をかけるのか。
もう用済みだから、こんな場所はいらないと。
そう言って、また捨てろと言うのか。
たかが復讐。そのためだけに。
『…………おれ、は…………』
こんな人でなしの畜生を拾ってくれた恩人を、斬り捨てろっていうのか――。
『……ぅ……ッ……』
今までどんな強い敵だって、最後には躊躇無く斬り捨ててきた。心は微塵も動かなかった。
だが今、丸腰で目の前で佇む老人を目の前にして。
涙で震えて、それを切り出すことができない。
一番大事にしてきた剣を、がしゃんとその場に落としてしまった。
『………なんでも、ありません…………っ……』
捨てられない。汚せない。
己にとって何より崇きものを、踏みつけて前には進めない。
たとえ自分の願いを捨ててでも、礼を失することはしたくなかった。
獣には、戻れない。
この人の前では、最後まで人間でいたかった。
『顔ぉ、上げろや。崇仁』
『……っ』
涙で濡れた情けない顔を、見られたくない。だが、この人の命令だ。
彼の家に身を置く者として、絶対の規則に従うべきだ。歯を食いしばり、面を上げる。
『いい、ツラだ。……人間になったじゃねえか、お前も』
そこで恩人は、まるで仏のように、優しく笑っていた。
『ここから、出たいんだろう。今のお前にはもう、狭すぎるわな』
『…………なん、で……』
『分かるさ。ずぅっと、見てたんだ。俺ぁ』
彼は髭を触りながら、慈愛に満ちた表情を崩さない。
親が子に本を読み聞かせるような、そんな声音で彼は続ける。
『お前は、交わした約束を守り通した。最後まで、礼を失することはしなかった。……人として、仁義を通した。だから今度は、仁義がお前を守る』
『……は、い……っ』
『高校を紹介してやる。荒くれの師だが、お前には合うだろう。鉄火で鍛えろ。……それから。石動の籍も、残しておいてやる。お前は今後、石動の剣士として蒼天旗に出続けろ』
言葉が出ない。ただ涙が出て、自らの意志で頭を下げ続けた。
『離れても、俺んとこの子だ。半端すんじゃねえぞ』
『……はいッ!』
これ以上、言葉はいらない。後は行動と結果で返すのだ。
今以上に必ず強くなって、奴を斬る。それまでは。
それまでは決して、この故郷には帰らない。
『麗奈が、向こうでお前を引き受けると言って来ている。学校へはそこから通え』
『……姉貴、が?』
『ああ。……あの子にもお前にも、今は互いが必要だろう』
違和感を覚えた。先に故郷を離れていた姉について。
その言い方ではまるで、姉がひとりでは立てないようではないか。
あんなに強靱な、姉が。
『崇仁。出る前に、もうひとつ言っておく』
『……はい』
『ここを出ても、地獄は終わらねえ。……むしろ、こっからだ』
何を当然のことを言っているのか。
鍛えるためにここを出るのだ。それが、当たり前のはずだろう。
怪訝な顔をしていると、悟ったような笑みを湛えて彼は首を振る。
そして、言った。
『人として、苦しめ』
師の言ったことは、よく当たる。そういえば姉の言ったこともそうだった。
高いところから言葉を落とすと、低い者に届くまでは時間がかかる。
今になって思うと、そういうことなのかもしれない。
『……ああ、崇仁。来たのね』
久しぶりに会った姉は、少し変わっていた。
綺麗な顔立ちや、怜悧とした物言いが昔と変わったわけじゃない。
『……姉貴が。煙草、吸うのか?』
『ええ。……この冬から、少しね』
だがどこか、暗い陰のようなものが紫煙と共に纏わり付いているような気がした。
その理由を、問うことはしない。
『今日から、頼む』
『ええ。好きにやりなさい』
姉は拾ってくれると言った。自分は拾われるために頭を下げた。
それ以上の馴れ合いは必要ない。互いに領分を守り、己のために生きる。
そういう冷たく強固な絆を、この人とは持った。
秋水大付属の顧問、村瀬健次郎との顔合わせも済ませた。練習後に練習をするため、会長が繋いでくれた警察道場にも挨拶をした。これで、強くなるための環境は整えた。
つもりだった。
最後の地獄が、橋倉崇仁を待ち受けていた。
『……なんだよ、これ』
呆然とする。
秋水大付属は『常勝』と自らを語る。確かにその名の通り、設備も指導も実績も最高峰だ。
何連続と、全国大会にも出場している。本当に澄んでいた時期もあっただろう。
だが、前提を忘れてはならなかった。
人は、組織は、代謝を繰り返す。
有名になって騒がれ、後追いの人間が入ってくる頃には、既に上澄みが消えていて。
『おい、先輩に挨拶しろよ』『あぁ? うるせーよ弱えくせに』『性格? 剣道に関係あんのかよ。勝ちゃいいんだろ勝ちゃ』『来週の練習試合、またあの雑魚とだってよ』『ストレス解消にはいいんじゃねえの』
まるで、蛾が光にたかるように。
常勝の名には、強さだけの二流の畜生しか残っていなかった。
『……は』
渇いた笑いがひとつ、秋水の道場に漏れる。あまりにも腹立たしくて笑ってしまった。
雑魚は放っておけと、大人の態度を決め込むこともできない。理由はひとつだった。
『正しく、因果応報って訳か……』
昔の自分がいる。こんなに殺したいほど憎らしい奴だったとは、石動の人間は懐が深い。
おそらく、これが最後だっただろう。道場の中で笑ったのは。
『もう、いい』
全てを捨ててきた。今更ここで何を拾う。
この手には、奴を斬るための剣だけあればいい。
いつも通り稽古をして、腕前を示す。入学してすぐにこの場で一番となった。
誰とも馴れ合わず、領分を侵してきた者には容赦なく噛みつき斬り捨て、腕を磨く。
そうしているとまだ人間でいられた。だが唯一、己を抑えきれない場所があった。
試合だ。
高校一年生のインハイ個人。それが檻から出て、初めての戦いだった。
『……そうか』
予選を突破して、全国大会の出場を決める。奴と同じく、紙屑を裂くように簡単に。
だが一度も、かつてのように高揚などしなかった。こんな勝利に価値などなかった。
欲しいのは一位じゃない。
剣鬼と互角に切り結ぶことのできる、純粋な力だった。
最後の決勝、三十分の苦戦の後に勝利する。剣道ジャーナルから記者が来た。
『橋倉選手。優勝おめでとうございます。粘り勝ちですね! 高校一年での優勝は快挙ですよ!』
ようやく、理解した。
奴が笑わなかったのは、そういうことだったのだ。
『……おめでてーのは、あんたの頭だろうが』
高校一年が何だ。奴は中学二年で蒼天旗を制した。
粘り勝ちが何だ。奴ならこんな試合は三十秒で終えられる。
『こんな低いところで、どうやって笑えってんだ……』
悪い冗談だ。こんなに弱いのに、俺に勝ちを語れと言うのか。
上には上がいると、どうしてこいつらは分からない――。
『もう、帰ってくれ。話すことは何もねーよ』
せめて牙を突き立てまいと、口を閉じる。まだ会長の顔が、脳裏に浮かんだ。
しかし、個人戦ではなんとか抑えられた衝動が、団体戦ではもはや抑えきれない。
『この、カスどもが! いい加減にしろ舐めてやがんのか! 殺すぞッ!』
化けの皮が、ひとつ、またひとつと剥がれていく。
戦いの場に来れば、すぐに屑だの雑魚だの口が尖る。仮にも味方に手と足が出る。
そして団体戦の結末は知っての通り、敗北――。
『おめーらには歳ぐらいしか誇れるもんがねーのか!? どいつもこいつも、この雑魚共が!』
人間としての、敗北。
ならばせめてと、最期の願いを蒼天に賭けた。……だが。
『……ちく、しょう……ッ』
空は灰に曇ったまま。
ついに満月から、天衣無縫が降り立つことは無かった。
× × ×
山頂に辿り着き、橋倉は竹刀袋と防具袋を手放し地面に落とす。
鍛えた身体は、荷物を背負い途中で走っても、まだまだ動けると場違いに言う。
だが、心はどうか。
「は、は…………」
口から漏れた吐息が疲れでないなら、それは自嘲だったのだろう。
ようやく笑えた。
こんなに可笑しいものが身近にあったのに、どうして今まで気付かなかった。
「……なに、やってんだ……。俺っち、は……」
自分の人生より笑えるものが、この世にあるか?
『……あの子は、ね。剣道、辞めたの』
一体何のために、全部を捨てた。
『会いたい? ……ごめんね。あたし、連絡、取れない。取っちゃいけない。……でもね』
一体何のために、ここまで登った。
『あそこになら、いるかもしれないよ――』
全部、奴を斬るためだったのに。
それなのに。
待っていた結末は、これか――。
『御剣家之墓』
「……ふざ、けんな………………」
灰色の空に、墓標が一つ。
晴れ渡る気分も光景も、そこにはなかった。
「勝手に、死んでんじゃねえッ!」
分かっている。それが奴の墓標ではないこと。
だが、吠えねば、気が済まなかった。
「……ふざけんな……。ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなッ! 暴れるだけ暴れて、それで終わりかよ! 逃げてんじゃねーよ! お前が、一番強えんじゃねーのかよ! くそ、くそ……ふざ、けんな……っ! ……ふざけんなァッ!」
墓石に、涙を流して竹刀袋で殴りかける。
だが罰当たりだとも、やめろとも、誰も言ってくれない。
「……じゃあ、どうすりゃ、いいんだよ……。おめーを、追いかけた奴は、どうすりゃ……」
獣だった。畜生だった。
だが、それなりに為した。それなりに償った。他にはないほど全てを捧げた。
今更幸せな結末など求めていない。捧げた時間を返せとも言わない。
だから、せめて。
己を介錯する男くらい、神に選ばせて欲しかった――。
「……くそ……っ」
涙を流して曇天を見上げ、狼が月へと遠吠えするように。
今はもうない、斬りたい背中に向かって吠え立てた。
「くそぉ――――――――――――ッ!!!」
灰色の空に、寂しさは鳴る。
共鳴する――。
「――ユーくんっ!?」
背中に向かって叫んだ声が、背中に向かって返ってくる。
剣に捧げた身体が、強く反応した。反射で涙を拭い、橋倉は振り返る。
不意に、その瞬間。確かに思った。
――眩しい。
「誰だ、おめーは」
「……僕、は」
狼の瞳が、新たな獲物を睨むとき。
曇天に、快晴が差し込む。
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