正直、初っ端から困惑しました。田中さんはほんとにフクロウ? 実は人間? それともフクロウ人間(ちなみに、子供が好きなダンスのアニメにそんなキャラがいたので)? いや、やっぱりフクロウだな・・・みたいな。
というのは、田中さんはフクロウと言われながらも人間のように書かれているのです。しかしこの曖昧さも、拝読するうち、意図があってわざとかな・・・と。
ほかの作品も拝読しているので、一つの言葉から幾重にもイメージを感じられる、含みのある筆致は、この作者様の良さであり特徴なのだろうと思います。決していい加減なのではなく、読み手の想像に任せる書き方、そこに魅力を感じました。
特に、私の中で芥川龍之介がパッと浮かんだ中盤の夢の話。表に出ているのと同じくらいの見えない何かが裏にあって、それも一緒に伝わってくるような文章、その見事な情景描写からも、飾りではない嘘の無さがちゃんと伝わってきました。
読後は不思議な余韻を引きずりますが、まさに自身の想像力と読解力で楽しむというより味わうお話。全体を色づかせる花筏(はないかだ)や夜桜といった素敵な景色の中で、ぜひ。