第25話「4月7日」

偽りと真実の違いはいかにして生まれるのだろうか。

私はいつも観測者によると考えている。偽りであろうと真実であろうと観測者が事実と認識したものがすべて真実となり、それ以外は偽りと化す。

故に真実は事実によらず観測する人間に全て委ねられる。

そのうえで一つ、あなたに問いたいことがある。

今、私は家にいる。薄暗い夜、肌寒さが身に染みるころだ。加えて私の体にはいたるところに生傷がみられる。やけども少々あなたには見えることだろう。

目の前には、私の父がいる。その顔は恐らく人を傷つけることにためらいがないと感じられる、慈悲など一切ないような悪人面だ。そしてでっぷりとした大きなおなかは本人の怠惰さを示しているようだ。

そしてその男は今、私の前で死んでいる。

頭には血が流れ、肩で呼吸すらしているようには見えない。

私の手には今、男が持っていた酒瓶があり、瓶からこぼれるしずくは真っ赤に彩られている。

さて、ここで質問だ。

貴方は何が起こったと考えた。

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