第11話

 今、町道場にいる

 本日も将棋指しで溢れている。

が、しかし、いくら待っても対戦相手が決まらないでいた。

 とりあえずコーヒーセットを楽しみながら待っているが、誰一人声をかけてこない。

 店主と目があったが笑って見えなかったことにされた。

このとき、僕はあることに気が付いた。

子供たちにはほとんど勝てる。

大人達は段を持っている。

そして、僕は4級

 ズバリ丁度いい対戦相手が今の僕にはいないということだ。


これではいくら待っても声はかからない。

が、勝ち試合か負け試合かわかっていながら声をかける勇気は僕にはない。

 それを見かねた店主が対戦中の子供に声をかける。

そして、こちらを振り向く

「光一君。次、子のこと戦って」

 自分が不甲斐ないばかりにすみません店主

そう思いながらその子の顔を見る。

恐らく見たことのない子だ。先週は来ていなかったのだろう。

歳は2歳くらい年下の男の子だ。

 ちなみにコーヒーはマンデリンのペーパードリップみたいな味だ。パウンドケーキは手作りっぽいが美味しくて普通に売っていてもおかしくないレベルだ。

そんな感じに自分の心の中で食レポをしていたら一人声をかけてきた。


 さっきの男の子だ。

急いで盤の前に座り駒を並べる。

かなり綺麗につまされているこの男の子が勝ったのだろう。

駒も綺麗にさばけている。強そうだ。

 彼は駒を並べている最中にもう駒をふっていた。

歩が4枚彼の先手だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る