第19話
「しかし……拘束の力ですか」
「どうかしたのですか? 宗玄さん」
「いえ、拘束の力を持った人物がいた……という事は、誰かを捕らえるつもりだった……という事になります。どうしてそのような事をしようとしたのか……と思いまして」
「たっ、確かに」
もしかしたら、二人を捕らえてその場に放置することで『行方不明』という状況を作りたかった……という事も考えられる。
そうすれば、刹那たちの行動を開始するのが遅れる。その間に自分たちの『準備』をすればいい。
それはつまり、自体はそこまで進展している……とも言える。だが、瞬たちは別行動をすでに開始しているのだが……。
「もしかしたら、俺たちが行く方にも重大な『何か』があって、瞬たちを止めるか俺たちを止めるか判断した結果。こうした対応を取ったのかも知れない」
「何か……って、何?」
「それは行ってみないと分からないだろ」
「ごもっともです」
もちろん、瞬たちが別行動をしている事にすら気がついていない可能性も十二分にある。
「それにしても、二人とも無事で良かったよ。まぁ、龍紀は思いっきり青あざは出来ているし、千鶴さんはかすり傷が出来ているけど」
「まぁ……な」
そう、二人はそんな状況をくぐり抜けてきた。そのことには変わりない。
「え? 何?」
「えと、龍紀様としてはキチンとけじめをつけたかった……と言いますか」
どうやら、龍紀としてはちゃんと決着をつけたかったらしい。
「龍紀さんが相手した人は、元々単細胞なところがあったらしく、自分が持っていた力との相性は悪かった。しかも、自分がどこにその『トラップ』を仕掛けたのかは分かっても、相手に知らせられる方法はなかったみたいです」
「なっ、なるほど。相手の拘束の力を千鶴さんが相手していた人と、龍紀が相手していた人にかけさせた……と」
つまり、千鶴は……。
「ん? それってつまり……千鶴さんはその『トラップ』の仕掛けられていた場所が分かったという事……ですか?」
「…………」
千鶴は無言のまま頷いた。
「どうやら、私は瞬様の妹……夢ちゃんの近くに長くいたからなのか……私は『色々なモノ』が見えるみたいなんです」
どうやら千鶴の言う『色々』は、何も『霊』だけではなかった様だ。
「ははは……。マジかー」
「ああ、マジだ。お陰様で俺たちはその場を離脱し、ここに向かってきた……というワケだ」
龍紀が言うには、ワザと大回りをして来たがために時間がかかってしまったのだそう。
「でも、あの人の身体能力なら簡単に追いつけそうなモノだが……」
「どうやら、私たちが逃げたのを見ても、特に追って来ていないみたいです」
その理由は分からない。しかし、追ってこないのならこちらとしては好都合である。
「そっか。じゃあ、とりあえず俺たちは俺たちで行動を開始しよう。瞬たちが向かって結構経っているみたいだし、龍紀たちを狙ったのが時間稼ぎだったとしたら、急がないとね」
刹那がそう言うと、二人はすぐにうなずき、宗玄さんが開いたドアから車に乗り込み、急いで元々の目的地である『孤児院』へと向かった。
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