第18話


「まっ、まぁまぁ宗玄さん」


 正直、このまま宗玄さんはかなり怖い。


 しかし、このまま放置しておくのも千鶴が可哀想だ。だから、とりあえず二人の間に割って入った。


「……それで、本当に何があったんですか? 龍紀に聞いてもどうせはぐらかされるだけだろうから、教えてもらえるとありがたいのですが」


 俺は出来る限り笑顔をつとめた。ただ、龍紀の青あざに関しては何となく察しが付いてはいたのだが……。


「千鶴」

「はっ、はい」


 宗玄さんに促される様に、千鶴は返事をした。


「実は、ここに来る途中で敵方に接触しました。龍紀様の怪我はその敵の能力……と言いましょうか。その『力』によるモノです」

「……なるほどね。つまり、龍紀が当たった相手の『力』は『カウンタートラップ型』だった……と」


 どういった感じでその『力』を使っているのかは分からない。


 ただ「自分の拳を自分で受ける」なんて器用な事をした理由に『力が関わっている』という刹那の予想は合っていたというワケだ。


「でも、それくらいならトラップに気をつけていれば……」

「……俺も出来ればそうしようとしていた。ただ、その相手自身は『自分自身は攻撃をしたい人間』だったらしい」


 龍紀が言うには、その相手の『攻撃スタイル……いや、性格』と『力』が合っていなかったらしい。


 だから、相手は自分がしかけたトラップなんてお構いなしに突っ込んできた。


「え、お構いなしって事は……」

「ああ。自分がしかけたトラップにかかろうが無視だ」


 そもそも、そういったカウンタートラップ型は、自分でしかけたモノの場所くらい把握しているモノ……だと思っていた。


 しかし、物語なので出てくるそういったタイプは、大抵後ろに下がって後方支援をしているパターンが多かったから、頭が勝手にそう変換してしまっているのかも知れない。


「……それで、千鶴さんは?」

「わっ、私は車の同乗者を相手にしていました」


「同乗者ですか?」

「はい」

「バス停までは比較的順調に来ていたんだ。ただ、バス停から降りた後にいきなり真っ黒い車の扉が開き、千鶴さんが攻撃を受けた」


 そして、反撃に転じようとした瞬間。攻撃を受けて姿を消していた千鶴が姿を現し、蹴飛ばしてきた相手を殴り飛ばしたらしい。


「不意打ちに成功はしたが、ダメージはあまりなかった。そこで、相手が車で来た事を踏まえて、俺が目の前にいた相手をする事にした」

「そして、私がその同乗者……つまり、車を運転していた人間を追いかける事にしたんです」


「……そっ、それで」

「私の相手は『拘束の力』を持っている人でした。ただ、その人は自分の力を過信している人だったので、龍紀さんが相手して下さった方よりも『非力』でした」


「なっ、なるほど」


 龍紀が相手したヤツは、話に聞いた限り。


 物理的な意味でかなりの筋力を持った人間だった。さっきの話から、千鶴の不意打ちの攻撃を受けたながら、あまりダメージはなかった様に聞こえた辺り、千鶴が相手をするのは難しいと龍紀は判断した。


 結果として、それが上手いことはまった……というワケなのだろう。

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