第7話


「…………」


 現状、手元には『カード』が数枚ある。


 空の居場所が分かった今、会いに行く『タイミング』を図っているのだとすれば、俺が持っているカード以外全て空が持っていると考えても不思議ではない。


 そうなると、警戒すべきはこの『カード』の奪取だろう。


 ただ、今の俺たちに彼らの攻撃を防ぐ術はない。それに、そもそもどんな人たちが攻撃してくるのかも分からない。


 よっぽど見た目が奇抜だとか、雰囲気が明らかに普通とは違うとかそういう『分かりやすさ』がなければ、俺たちにはどうしようもない。


 つまり、俺たちが待っていようが俺たちの方から仕掛けようがさして変わらない様に思える。


 ただ、仕掛けるなら仕掛けるとしてこっちも何か手段がなければ……。


「瞬! 瞬っ!」


 ふと気がつくと、なぜか慌てたような様子の刹那と周囲の視線を感じる。


「?」


「おーい、天野ー」

「っ! はっ、はい!」


「さっきから呼んでたんだが?」

「すっ、すみません」


「はぁ、まぁいい。145ページ、読んでみろ」

「はい」


 俺は指示されたとおりに、目の前の教科書のページをパラパラとめくり、読み上げた。


■  ■  ■  ■  ■


「はぁ、焦った」

「珍しいな、瞬が上の空というのは」

「やっぱり、お昼の時の話?」


「……まぁな」


 確かに二人の言うとおり、俺から会いに行ってもいいとは思う。こういった駆け引きは大抵『同等の力関係』があって成り立つモノだ。


 多少の『力の差』ぐらいなら、この駆け引きこそ見物みものなのだろうが、全くないのとあるとでは、駆け引きなんてあってないようなモノである。


「それに、今まで兄さんの言うとおりにしてきたが、兄さんは俺たちに何も言ってくれないから、何も分からない」

「多分、余計な事を言って意識を逸らして欲しくなかった……とか心配からだとは思うけど」


「その気持ちは分かるが、何も知らないと逆に不安になるものだ」

「ああ」


 だからと言って、俺たちが下手に動いて逆に手を煩わせるのも、嫌ではある。そんな事をしようものなら、後でネチネチ言われるに違いない。


 ――それは、かなり面倒ではあるのだが。


「とは言え、やろうがやらまいが変わらないのなら、行動した方がいいとは思う」


 あの人たちが狙っているのはあくまで『カード』だ。俺たちにはそもそも興味がない。


 そこに、俺たちが行けばそれこそ『鴨が葱を背負ってきた』くらいにしか思わないだろう。


 ならば、行動しても問題はないはずだ。


「……だな」

「うん」


 こうして俺たちは、俺たちの判断で空に会う事を決めたのだった。

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