第6話
「……で、瞬はどうするの?」
「どうするって? どうしようもないだろ」
「ふーん。じゃあ、お兄さんの想さんの言うとおりにするわけだ」
「……その言い方をされると無性に腹が立つな」
「間違っていないじゃん」
「…………」
確かに刹那の言うとおりではある。言うとおりではあるが、やはり『兄さんに従わされている』と言われているようで無性に腹が立つ。
「まぁ、今の状況じゃどうしようもないというのが正直なところではある」
「……」
「……」
龍紀の言葉に俺たちは無言になった。
「……ただ、このまま何もしないというのも
「だよねっ!」
「…………」
何やら嫌な予感がする。
龍紀は、生徒会長という立場もあってか物事を客観的に物事を見ることが出来る。だから、比較的こういった事には頭を突っ込むことはしない。
ただ、元々は好戦的な性格ではある。
だからいつもであれば、冷静に対応するのだが……この動かない状況に対し、昔の好戦的で行動的な頃の龍紀になっているのかも知れない。
なんだかんだで龍紀もジッとしていられない人間ではある。
「ねぇ、お兄さんは『空の居場所』が分かったって電話してきたんだよね?」
「あっ、ああ」
「その時に言わなかったか? 場所」
「……それを言ったところでどうするつもりだ」
正直今。この二人が考えている事を何となく察することが、出来てしまっているのだが……一応、聞いておこう。
「どうするつもりって、行くんだよ! 空に会いにさ!」
「……」
やはり、そうくるのか。
確かに、今の状況から何か進展するには『時間』と『タイミング』が必要だ。
兄さんがあの電話をかけてきたところからすると、もう『カード』は俺と空が持っているモノで全て揃っているのだろう。
「行ってどうするんだ。それに、分かっているだけでも結構な『力の差』がある。俺がカードを持っているっていう情報も当然入っているだろうし、こっちからわざわざ行かなくてもいいだろ」
それだけ力の差があるのなら、わざわざちょっかいをかけてくる事もなさそうだと、俺は考えていた。
「分かっていないなね、瞬。こういうのは何の前触れもなくする事に意味があるんじゃん」
「その前触れがなかったとしても、相手方は何かしらの準備をしていると思うが? それに、そんなところに突っ込んで待ってましたと言わんばかりに捕まったらそれこそ意味ないだろ」
「それは……」
「確かに、瞬の言うとおりではあると思う。俺たちが分かっていて相手方が知らないという決まりも当然無い。ただ、このまま待っているのと俺たち自ら行動しても結局のところは変わらない……と、俺は思うがな」
「…………」
龍紀の言うとおりでもある。結局のところ、俺たちは睨み合って動けていないだけなのだ。
今のこの状況では『変化』は到底望めない。
それは確かにそうである。確かにそうだとは思うが……。俺たちはそのまま無言になり、数分後。昼休みが終わるチャイムが鳴り響いたのだった――。
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