第5話
「本当か?」
「あっ、疑っているね」
「いや、疑っているワケではないが……」
「まぁ、いいんだけどさ。ただ、時期は分かったとして……」
なぜか刹那は怪訝そうな表情で腕組みをしている。
「どうしたんだ?」
「いや、結局のところ……根本的な解決にはなっていないと思ってね」
「解決?」
「うん。瞬のお兄さんが今ではない理由は『月』と『星座』と『天気』の関係からだろうとは思う」
「月と星座と……」
「天気?」
俺と龍紀は不思議そうに顔を見合わせた。
「月と星座は何となく理解出来るが……」
「なぜ『天気』も関係してくるんだ?」
「ああ、うん。今まで散々『星座』に頭を傾けてきたから『月』が関係してくるのは分かると思う。そして『天気』はその二つがキレイに見えるために必要だろうと思う」
「じゃあ、天気が悪いと儀式も出来ないのか?」
「そういうワケではないと思うけど、出来れば……ってところだと思う」
刹那曰く、あくまで『天気』は『星座』と『月』の光を取り込むために必要な『条件』として上げただけらしい。
「だから、行くタイミングを『今』にしなかったのだろうと思う」
ただ一番の『理由』は『星座』ではなく『月』らしいが……。
「それで『根本的な』っていうのは、なんだ?」
「ああ、うん。瞬のお兄さんの『タイミング』の話はそれでいいとして……その行くまでの『間』の問題は変わっていないと思ってさ」
「そういえば……そうだったな」
言われてみると、今話したのは「兄さんがタイミングを今にしなかった理由」だけである。
それに刹那の言うように『今すぐにじゃない』という理由は分かっても、その『空に会う』までの『間の問題』は解決していない。
「間の問題?」
ただ龍紀はあまりピンときていないようだ。
「ああ。相手方に空の居場所の情報が俺たちに伝わっているかどうかという事は別として、相手方が俺たちに攻撃する事が出来るという点は何も変わっていない」
「……そうか。今すぐに状況が変われば、その心配はなくなるが、待つ時間があるという事は、それだけ相手方にもチャンスを与えてしまうというワケか」
その龍紀が言う『チャンス』が俺たちにとっては『ピンチ』なのである。
「龍紀は多少、腕に覚えがあるかも知れない。でも、俺も瞬もそこまで強くはない。ただ、龍紀は『霊が見えない』という欠点がある」
「しかも、母さんの実家。本家の人間がどんな『力』を持っているのか分からない。その上、誰がその人間なのかも分からない」
「結局のところ、何も分からない状況で攻撃されてしまう可能性がある……という点は何も変わっていないという事か」
「ああ。今すぐに……となればその心配はなくなったのだが」
「会いに行く……そのタイミングまで俺たちは受け身になるというワケだね!」
そう刹那は元気よくそう言ったが、俺と龍紀は分かっている現状にとても元気にはなれそうになかった。
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