第3話


「……ん? なっ、なんだなんだ? みんな揃いも揃って」


 入ってきた実苑さんは、状況が理解出来ていないのか、俺たちの表情を確認している。


「えっ、あっ……いや」

「なんと言いますか……」

「タイミングが良すぎる……と言いますか」


 俺たちはお互いに合図を送っているかの様な反応になった。


「??」


 まぁ、それでも実苑さんは分からないと思うが。


「……って言うか、呼んだって言いましたよね?」

「うん。言ったよ?」


「連絡先。知っていたんですか?」

「ああ、この間会った時に……ね」

「はい」


 兄さんの言葉に、実苑さんも頷いている。


「…………」


 ――なるほど。あの時か……。


 兄さんの言っている『この間会った時』というのは、俺が黒見里聡さんに襲われた時の事だろう。


 しかし、俺がいた時はそんなやり取りをしていた様子はなかった……はず。


「まっ、情報収集するためには出来るだけ近しい人の方が良いかなって思っただけなんだけどね」

「……俺としても、いつもは指を咥えているくらいしか出来なかったけど、自分の友人をコケにされても……とはいかない。だから、手を組んだんだよ」


「…………」


 実苑さんと聡さんは、俺と刹那が小学生の頃に巻き込まれた事件を解決してくれた。その時から二人が友人だと言う事は知っている。


 だからこそ、実苑さんが怒っている理由もよく分かる。


「それで……何の話をしていたんだ?」

「ああ。実は、刹那だけじゃなくてこの二人にも何らかの干渉があるんじゃないかって話をしていてね」


「はい」

「そうなんです。でも、その干渉してくるかも知れない人たちが全員が全員。実苑さんの様な『力』とも言えるモノが使えるとしたら……」


 龍紀が深刻そうな表情を見せたのは……多分、そうなった時の事を考えたからだろう。


「なるほど。それでその『力』とも呼べるモノの中に『文字通りの力』ではない類にモノがあると仮定出来るのではないか……と」

「うん。そうなんだよね」


「?」


 実苑さんも分かっていたから、いつもとは違い真剣な表情を見せている……のだが、なぜか兄さんは余裕のある表情を見せていた。


 俺は、なぜ兄さんがその表情を見せたのか……と、不思議に思ったが、すぐにその理由が分かった。


「……って、想さんは知っていますよね? そういった『力』のほとんどは『物理的に攻撃するモノ』だという事を」


「え」

「え」

「え」


 実苑さんの言葉に、俺たちはすぐに兄さんの方を見た……が、兄さんは「そうだっけ?」と、こんな時にも関わらずそう言って俺たちをはぐらかした。


「しかも、どうしてここまでして『本家』の人間が想さんと瞬の母親を蘇らせたいのか……その『理由』と『目的』も知っていますよね」

「…………」


 兄さんとしては、そのままはぐらかしてフェードアウトしたかったのだろうが、実苑さんの今の発言は……さすがに聞き捨てならなかった。

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