第2話
「でっ、でも。その人が生きていたとして、それが今回の話にどんな影響があるんですか?」
「そうですよ」
確かに普通の人が聞いたとしても、それがどういった影響があるのか分からない。
「あっ、あまり友達の家族を悪く言いたいわけではないのですが……いい人ではないという事は今の話で分かりましたが」
龍紀はそう言って顔を伏せた。
「…………」
多分、龍紀は俺を気遣ってこそ、そう言ってくれたのだろうが、残念ながら俺は爺さんの事をあまり知らない。ただ、龍紀自身が言った通り、爺さんはあまりいい人間ではない。
でも、兄さんは『爺さん』をよく知っている。そんな『いい人ではない』程度ではないという事を……。
「……君たちがそう言うだろうとは思っていたよ。それに、僕も君たちの立場だったら、そう言うだろう」
「ああ。爺さんが生きているって事は、もしかしたら母さんが駆け落ち同然で行ったのも仕組まれていたって可能性があるってだけの話だ。刹那も龍紀にも関係のない話ではある」
そう、この話は『俺の家に関わる話』であって二人には関係のない話である。ただ、兄さんがこの場でわざわざ話したのは……多分、宗玄さんと俺ににこの事話したかったからだろう。
「でも、問題は……君たちに何かしら干渉してくる可能性があるって事を言いたくてね」
「?」
「?」
「…………」
二人は「どういう事だ?」と不思議そうな顔をしていたが、俺は何となく兄さんの言いたい事が分かる。
「まぁ。今の話の流れでこんな事を言われても分からないとは思うが、空が母さんの実家と繋がりがあるっていうのと、今まで俺だけでなく二人とも面識がある」
「……」
「……」
「しかも、刹那に至っては母親とも話している。その時点で何かしらアクションを起こしてくる可能性は十二分にあるだろうって話だ」
「!」
もちろん、空が何も話していない……という可能性も否定は出来ない。しかし、可能性が想定出来るだけした上で、対処すべきだ。
まぁ、想定したモノ全てをカバーしても想定外なんて起きて当然だろうが。
「刹那君は昔。事件に巻き込まれた際、折里実苑さんに助けられているよね」
「はっ、はい」
「その時、実苑さんがしていた事と同じ……もしくはそれ以上の事が出来る人間があの家にはいる。そう考えた方が妥当だと思うんだよ」
「……」
「しかも、全員が全員同じとは考えにくい。下手をすれば間接的な方法を使ってくる可能性も否定出来ない……というワケですか」
「……そういう事になるね」
「それは……困りましたね」
龍紀にはなじみのない内容だろうと思っていたが、案外すんなり受け入れている。
「まぁ、こんな事もあろうかと……ちょっと人を呼んでおいたんだけどね」
「え」
「ん?」
「?」
兄さんは、分かりきっていたかのような口ぶりだ。もうすでに手を打っていた様だ。さすが、爺さんにあそこまでさせた人間である。
でも、俺たちは『誰を呼んだのか』分からなかった。
そうして、理解しきれていない俺たちを知ってか知らずか、病室のドアを開け、入ってきたのは……。
「あっ」
さっきも会話に出ていた『実苑さん』だった――。
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