第11話


「……どういう意味だ?」


 烏座の由来とコップ座の由来はどちらも似たようなモノだったはずだ。


『まさか、分かっていなかったのか?』

「……と言いますと?」


『このコップ座の由来は酔うという事を説明しなかったが故に起きた惨劇が元になっている。このコップ座はそれを教訓にしているのだろう』

「なるほど、このコップ座はあくまで『使われた道具』という解釈になるのか」


 だから、その時に使われた『さかずき』の感じた感情……とは少し違うかも知れない。


 しかし、その時の『起きてしまった惨劇を繰り返さないため』という教訓をこの『コップ座』は『烏座』の影響を受けてしまった『少年』を『訂正』という形で元に戻させようとしたのだろう。


『だが、それも元々あの少年の性格が良くなければ、訂正すらしなかったのだろうな』

「そっ、そうか」

「…………」


 烏座の言葉に龍紀は、どことなく安心したような表情を見せた。多分、いつもと違う少年を相当心配していたのだろう。


「ただ、カードのあんたが『悪いヤツ』から逃げているのは分かったが、なんで俺たちからも逃げようとしたんだ?」


 そう、いくら『心配だったから』とか『悪いヤツに使われるくらいなら』という理由で逃げ出し事は、さっきの説明でも分かった。


 しかし、いくら俺がその『悪いヤツ』だと思われる人間と関わりがあったとしても、さすがに逃げられるとは思ってもいない。


『……貴様からはその悪いヤツの匂いがする』

「匂い……ですか」


 ――そう言いながら龍紀は俺から少し離れた。多分、烏座の言葉を字面通りに捉えたのだろう。


 しかし、それにしても……だ。


「……いや、ちゃんと風呂にも入っているし、ちゃんとしているからそんな離れるな」


 あからさまに……というワケではないが、それでも龍紀はそう言う俺から距離を取ろうとしている。


『若干……語弊があったかも知れないが、今言った匂いは雰囲気という意味だ』

「あっ、そうなんですね」

「……」


 ホッとしたのか、龍紀は元の位置に戻った。いや、そんな事くらい察しろよ……と俺が言ったところで、無意味なんだろうが……。


「……まぁ、その悪いヤツの関係者だろうなってヤツとは確かに顔馴染みではあるが、ここ最近は『そいつ』の顔すら見ていない」


 そう、俺はここ最近『星川ほしかわそら』に会っていない。


『だから信用しろと?』


 ただ、それだけで『俺を信用しろ』なんて……それはおこがましい話だろう。俺だって烏座の立場ならそう言う。


「そうじゃない。俺が知りたいのはその『悪いヤツら』が『カード』であるあんたたちを使って何をしようとしているか……って事だ」


 だから……というワケではない。そもそも、本来の目的は確かに『カード収集』だ。


 しかし、ここ最近はその『本来の目的』にすら疑問を呈している。本当に、このまま続けていいのだろうか……と。


『…………』


 その為にも烏座の言っていた通り『今の状況が分かっている』のであれば、俺はぜひともその話を聞きたいと思ったのだ。


『……なるほど。話は分かったが、そもそも貴様らは星を紡ぐ少女を知っているのか?』


「星を……」

「……紡ぐ少女?」


 烏座は、俺たちにそう尋ねてきたが……その俺たちは烏座の言う『星を紡ぐ少女』という単語自体耳にしたのは、コレが初めてだった。

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