第10話
ただ烏は『黒髪長髪の少女』と言っただけで『星川空』の事を言ったワケではない……と言い切れなくもないが、今の状況ではその可能性はかなり高いだろう。
しかし、そうなると『新たな疑問』が生まれてくる。
「じゃあ、どうして今までの『カード』たちはあの子を前にしても特に警戒しなかったのだろうか」
「……」
そう、今龍紀が言った様な事がどうしても引っかかってしまう。
『当初……この土地で目覚めた瞬間から、私たちはどうして今の様な状況になったのか、そこから理解しなくてはならなかった』
「……」
「……」
そうか、彼らは『あの日突然、具現化』した。
彼らからすれば「なぜ、いきなりこんな状態になっているのか……」そう思ったに違いない。
『そこで私は自分の翼を使って色々情報を調べたのさ』
――なるほど。
そんな状況の中でも、烏は『自分の出来る事』を考えて『持っているモノ』を最大限に活用したのだろう。
「じゃあ、あなたは『情報収集』をしてその結果……」
『私が情報を集めた中でも、これだけが自分で動けないと分かったからな』
「ん? ちょっと待て、他の星座はもう全部『具現化』していると考えて……」
『他にもこの杯の様な無機物なモノはある。しかし、他のモノは悪いヤツらから守れる状態だった』
「でも、この杯はその状態じゃなかった……と」
『あのままここに置かれていると、早いうちに持っていかれてしまう。私はそれを避けたかったが、あの扉が開けられないと、私もどうしようもない。だから、様子を見ていた』
つまり、あれだけジーッと熱い視線を向けていたのは『扉が開くタイミングを見計らっていた』というワケか。
なるほど、決して『光物に惹かれて』というワケではなく、ちゃんと理由があった訳か。
「……で、その過程であの少年が『彼ら』の影響を受けてしまった……というワケか」
『それに関しては、本当に悪いと思っている。知らない内にあの少年には迷惑をかけてしまった』
「……というか、あの少年だけでなく周りにも結構被害が出ていたみたいだけどな」
そう言いながら、俺は中でも結構な被害を受けたであろう龍紀の方を見た。
「ん? いや『被害』というか……一応、ちゃんと訂正はしてくれたから特に大きな問題は出なかったが」
『それに関してはすまない。私の由来が由来なだけに、彼には悪い事をしたと思っている』
烏なだけに人間みたいな『表情』では判断出来そうになかったが、その代わりという感じで分かりやすく『態度』には出ていた。
「でも、訂正しにきていた……っていうのは、やっぱりあの少年の『性格』なのか?」
それにしては『烏座の影響』をあまり受けていないように感じる。
俺の知っている『カードの影響を受けた人たち』というのは、下手をすれば『人格が変わってしまった』くらいの影響を受けている人が多かったからだ。
『それは……このコップ座の影響があったからだろう』
烏座は、そう言って足で掴んでいる『コップ座』を見た――。
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