第3話
兄さんはまぁ、ほぼ『家から出られない』という状況ではあったものの……祖父はなんだかんだ言いつつも、ゆくゆくは『家を継ぐ人間』として見ていた。
だから、兄さんは小さい頃からそういった『集まり』にも、よく祖父とと共に出ていた様だ。
『ただ、母さんの実家がその集まりに出たのはその時が最後みたいでね。それ以前は毎回出ていた様だけど』
「じゃあ、兄さんがいた時にはもう……」
『いないかった……って事になるね。でも、僕がそれを知ったのはここ最近で、宗玄さんから聞いただけなんだけどさ』
「……」
状況が状況なだけ、正直俺は他の人に対しても不信感を抱くようになってしまっている。
それがたとえ『執事の宗玄さん』だったとしても――。
ただ、それ以上に『自分のしていることが本当に正しいのか』そう思えてならない。
『父さんと母さんの間にどういったやり取りがあって、駆け落ちなんて事になったのかは知らない。ただ言えるのは、その駆け落ちがあったのは、双子の妹さんが亡くなった後って事くらいだね』
「……亡くなった原因は何でしょう?」
『聞いた話では原因不明の病だって事らしいけど、それ自体が怪しいんだよね』
「……と言いますと?」
『うん、実は救急車で運ばれている途中で亡くなったらしいんだけど、救急車に乗った時点でかなり危ない状況だったらしくて……でも、その近くにいたメイド以外は特に慌てた様子もなかったらしい』
「……」
『それって、かなり異様な光景に見えると思うんだよね。だって、仕えている家の娘さんが亡くなったのにさ』
「……」
それは確かに異様な光景だっただろう。
自分の仕えている人が突然目の前で倒れられたり、苦しんでいたりすれば誰だって驚くし、慌てるのは何も不思議な事ではない。
むしろ、そちらの方が普通だ。
『なんかさ、それこそ何かがあって容態が急変しましたみたいな感じにしか思えないんだよね』
「特に持病とか夢の様に体が弱かったとかは……」
『ない。それこそ、それまで大きな病気なんてしていなかったくらいに……』
「…………」
それで、母さんは実家に対して不信感を抱いたのかも知れない。
もしかしたら、母さんはその妹さんから色々話を聞いていて、元々不信感を抱いていたのかも知れないが、どちらにしても、母さんが実家から姿を消したのは紛れもない事実だ。
「……」
それにしても、兄さんはどうしてここまでピンポイントに詳しいのだろうか。
『瞬……なんでここまで詳しいんだろ? って思っているだろ』
「いっ、いやそんな事は」
『はははっ、別に隠す事じゃないって。その疑問を持つのはごくごく普通の事だし』
「……」
さすがに兄さんだ。こういった『普通に考えれば』というのは、すぐに分かってしまうのか。
ついさっきは珍しく察しが悪かったが……。
『まぁ結論だけ言うと、そのメイドさんがまたその妹さんが亡くなった責任を押しつけられそうになったから、お怒りになった母さんが一緒に連れて行ったんだよ。それで、話を聞くことが出来たってワケ』
「なっ、なるほど……」
確かに、詳しい状況を知っている人でなければ、ここまで詳しく知ることは出来なかっただろう。
「じゃあ……兄さん、その妹さんがどういう人だったのか……って事も少しは知っているんですか?」
俺は気がつくと、兄さんにそう聞いていた。
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