第2話


 ただ、そうは言われても今まで「全く」と言って知らなかった。そこに、母さんが『双子』だったと言われても、なんだか不思議な気分だ。


 まぁ、今……何やら不穏な言葉が聞こえた気がするのだけど……気のせいだったのだろうか。


「あの、今……何やら不穏な言葉も聞こえましたが……」


 俺は思わず心の声をそのまま聴き返していた。


『ん? 今のある事で……っていう件? でも、それは決して不仲故に……とかじゃなくて』

「…………」


 いや、俺は特にそう事を聞きたくて言った訳じゃないが……。まぁ、確かによくある話と言えば……そうかも知れない。


『母さんとその双子の……妹さんの仲が決して悪かった事はなくて、むしろ良かった』

「……」


 だから、兄さんのその『仲が悪かったわけじゃない』という言葉がくるのも、流れから何となく分かっていた。


 ただ、俺と兄さん、そして夢は普通の『兄弟』という形からは離れているから、そもそも『仲がいい』とか『悪い』とかイマイチ分かっていなかった。


 しかし、刹那と遥さんと出会い、その時のなってようやくなんとなく分かるようになった……という具合だ。


『ただ、僕も母さんの実家が何をしているか……までは知らない』

「……そうですか」


 でもまぁ、そうでなければ『雲隠れ』なんてすぐには出来ないだろう。


 ただ『誰かを使って』なんてしていれば……すぐ分かりそうなモノなのだけれど……どうやら『闇』は相当深そうだ。


 しかも、兄さんが分からないというのも、なかなか珍しい。


 父さんの実家を引き継いだ兄さんは、言ってしまえば一族の主で会社の社長でもある。


 だから、そういった『古い家』の他の人たちとも多少は知り合い……らしいし、それに、こういった『昔から続く古い家』というのはあまり多くはない。


 さすがにその全部と知り合いというワケではないにしても、大体は分かる……くらいは兄さんの顔も広い。


 ただ兄さんも知らない『業界の人間』となると……よほどマイナーかその業界自体が真っ黒か……くらいに絞られてしまう。


『母さんの旧姓を知れば……って思ったんだけど、日本人に多い名字だったからどの家の人なのか全く分からない』

「それはつまり、佐藤とか鈴木だった……という事ですか?」


『うん、でもまぁ……一見クリーンに見える業界でも意外に真っ黒だったなんてよくある話なんだけど』

「そういった話はどこか余所でしてください」


 暗い話、黒い話はここ最近よく聞く。


 兄さんは「冷たいなぁ」と言っていたが、その『良くない話』に俺が必死になって探している『カード』が関わっている……と思うと、正直悲しい気持ちになってしまう。


『ただ、父さんと母さんが出会ったのはそういった古い家が集まる行事で……って事は知っているよ』

「!!」


 本当に、ごくごく普通の流れでなに気なく行った兄さんの言葉に、俺は一瞬スマートフォンを落としそうになった。

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