星を紡ぐ少女

第5話

「はぁ、まぁ……いつかは話さないといけないと思っていましたから、別にいいですよ」

　俺はそう言って、不思議そうな表情をしている刹那の前に『あの古びた本』を見せた。

「それで？　聡さんはコレを狙っていた……と？」

「多分ね」

「……なぜ？」

「それは知らない」

「……」

　――それじゃあ話が進まないじゃないか……とは、言ってはいけないのだろう。分かっていれば、もう少し対策のしようがあったのだろうだから。

「いやね。僕も聞き出そうとしたんだけど、なかなか頑なでさ」

「……」

「……」

　なぜだろう。兄さんの口から『聞き出す』なんて単語を聞くと……どうも不穏に聞こえてしまう。

「……って、ん？　もしかして、聡さんがここ最近姿を見せていなかった『理由』って」

「…………」

　まぁ、刹那でなくても今までの話の流れでその『理由』に行きつくのではないだろうか。

「えっ、僕の家にいてもらったよ？　あの人には聞いておきたいことがたくさんあったし」

　それをサラッと言える兄さんもスゴイところだが……多分、それは今までの環境がそうさせたのだろう。

「…………」

　ただ、あっけら感と答える兄さんに、事情を知っている俺はため息と呆れ、刹那に至っては軽く引いている。

「兄さん。それは一般的に『犯罪』ですよ」

「えっ、そうなの？」

「…………」

　自分も似たようなされてきた結果……だとは思うが、やはり兄さんはそこら辺の『常識』というモノが欠落している様だ。

「でも、よくここが分かりましたね」

「それは……ほら、『目的のモノ』は分かっていたから」

「……なるほど」

「あっ！！」

　刹那は何やら興奮した様子で突然大声を出した。

『…………』

『…………』

　しかし、人が集まる様な場所で大声を出せば、周囲の視線は当然、その人に集まる。

　それは刹那も例に漏れず……刹那は「すっ、すみません」と言って少し小さくなった。

「なっ、何？　どうしたの？」

「どうした、突然大きな声を出して」

「あっ、いや。実苑さんが言っていた事って、これだったのかな……って」

「実苑さんの言っていた事？」

「ほら、遅かれ早かれ来るだろうから……ってヤツ」

「ああ、言っていたな。そんな事」

　今更思い出すあたり、気にも止めていなかったのだとこの時になって気が付いた。

「……ちょっと待って」

　盛り上がる俺たちを兄さんは片手で制した。

「え？」

「？？」

「さっきから話に出ている『実苑さん』って、ひょっとして『折里（おりさと）実苑（みおん）さん』か？」

「……？　はい」

「それがどうかしたんですか？」

　分かりやすく動揺している兄さんに俺たちは聞き返した。

「いや……」

「……」

「……」

「はぁ、折里家は……実は、俺たちの母さんの実家……そこの分家だ」

　兄さんは両手を組み、小さく……そう言った。