第2話
「よっと……」
俺は、ゆっくりゆっくり……一歩一歩踏みしめるように慎重に歩いていた。
「ふぅ」
こんな所で足を滑らせ、あまつさえ尻もちをつく……なんてかなりカッコ悪い。だったらいっそ多少遅くなっても着実に歩いた方がいいだろう……と俺は考える。
ただ、そんな風に神経を研ぎ澄ましながら歩くのもなかなか大変だ。
俺は帰っているところだが龍紀は部活、刹那は今日も授業で分からなかったところ先生に質問をしに行っている。
最初は俺も「刹那を待つ」と言ったが、刹那は俺を気遣ってくれたのか「大丈夫、大丈夫」と言いながら俺の背中を押して帰らせた。
「……ん?」
白い雪だからこそから分かる綺麗な黒髪の少女。
綺麗なストレートでそれに反して服装は白い。理由があるとすれば俺の『腐れ縁』で友人の刹那の母親が選んだというロングコートのせいだろう。
なんで、そこまで『白』で統一しているのか正直、全っ然理解出来ない。
一応、刹那の母親に聞いてみたものの「それが今年の流行なのっ!」と、逆に噛み付かれてしまった。
ただまぁ、俺としては『流行』と言われれば返す言葉もない。それに『その少女』に似合っていないのであれば色々言えるのだが、結局のところ似合っているのだから何も問題はない。
そう……ただ俺が『白』が苦手なだけだ。
ただ、ここで勘違いして欲しくないのは、決して『嫌い』という訳ではないという事である。
私服ではもっぱら『黒系』のモノや服を着ることが多いが、決して着ない訳ではない。
「……」
でも、俺は昔から『白』を見ているとどうしても『兄さん』を連想してしまうのだ。
ただ一言だけ言うと、兄さんも『白』が好きだった……という訳ではない。しかし、なぜかほとんどの持ち物が白で部屋もほとんどが白。そして、兄さんの着ている服も白……。
何もかも……兄さんに関するすべてが白、白、白……。それは俺に一種の恐怖を与えるほどだった。
「空」
「……久しぶり」
少女は俺の声に気づき、こちらの方を見た。
「……」
少し『笑顔』が見えるようになったのは『カード』のおかげだろうか……。
なぜか、『カード』が集まるたびに少女はどんどん明るくなっている……様に感じる。ただその『理由』は謎のままで分かっていない……。
「……」
「……」
修学旅行が終わって今目の前にいる少女、空と会うのは三日ぶりだ。
その間に何か心境の変化でもあったのかも知れないが……詳しいことを聞くほどでもない……と俺はそう判断した。
なんか、こういう感じは……久しぶりだ。
どうやら朝の間に大人の人たちが除雪してくれたのだろう。道は特に歩きづらいということもなく、俺と空はゆっくりと歩いていた。
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