第2話
「ふぅ……」
俺は少し冷えた空気に息を吹きかけた。でもまだ、吐いた息が白くなるには早い……。
しかし、季節は順調に巡っている。その証拠に道ばたでは朱、黄色、色とりどりに染まった葉が目につく。
そして――――。
「はぁ……」
ため息をつきながら、俺はもはや恒例になってしまった神出鬼没の少女を見上げた。
「…………」
これが、素晴らしい笑顔だったら可愛らしいのだが、残念に思ってしまうほどその少女は、ロボットのように無表情だ。
ただついでにいうなら……。本人的には一応、身を隠しているつもりかも知れないが、少女の夜空のように黒い髪の色と、今広がっている風景からは完全に浮いている。
しかし、この状況を何も気づかないふりをしてそのまま通り過ぎるは……さすがに悪い。
「……バレた?」
「一応聞くが、それで隠れているつもりか?」
「……一応」
「…………」
俺から顔を背けて少女は小さく答えた……が、顔をそむけたのは、さすがに恥ずかしかったからだろう。
少女の名前は
俺が偶然訪れた『とある場所』で起きた偶然の出来事が原因で知り合った少女で、俺と一緒に今、カード探しをしている。
ただ俺はこの少女のことを『名前以外何も知らない』のだ。それは住んでいる場所はおろか年齢すら知らないほどである。
まぁ、俺が「わざわざ自分から聞くのもなぁ……」と面倒くさがった……というだけの明確とも言えない理由聞けず、ここまで来てしまった結果なのだが。
「空としては上手く隠れたつもりかもしれないが、髪のせいでむしろ分かりやすくなっているぞ」
「…………髪」
そう言われて「それかっ!」という顔で辺りを見渡した。
「……」
正直、髪だけのせいでもない。
俺が言ったのは特に目に付くという意味だったのだが……とにかく今の落ち葉が舞うこの景色に空の黒い髪は、かなり目立つ。
あまりそういった事に関心に気にしていない俺ですらそう思ってしまうほどなのだ。
「まぁ、それはいいとして……」
「うん。見つけた」
「おい。俺はまだ何も言っていないが……」
「でも、聞きたいことはそれのはず……」
「……」
「…………」
わざわざこちらが細かい説明をしなくてもすぐに空は答えを返してきた。
出会ったばかりの頃はそれが出来なかったが、どうやら最近になって空は『カードの場所』を察知することが出来るようになったらしい。
ただ確かに、聞きたいのは『それ』だが、会話の順序とか完全に無視だ。それに、空は『場所』といっても正確な住所が分かる訳ではないのだ。
それを考えると、そこまで『便利』なモノでもないらしい。
「場所はなんとなく分かるけど……」
「なんだ?」
空は言いにくそうに視線をそらした。
「……今回は、人じゃ……ない」
「ん? 人じゃない?」
「うん。その場所は人が住んでいるけど……持っているのはたぶん……違う『存在』のような」
「……なるほどな」
空はその事実に対し困惑している様に思えたが、俺としては、むしろそれはあり得ない話ではない……と思っていた。
いや、むしろ今までこの話が出なかったことがおかしい……と思っていたくらいだ。
「でも、おかしい……」
「おかしい?」
「うん。このカード……」
「……?」
そう言って空は今まで集めたカードを俺に見せた――――。
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