第5話
「でも今、返してもらった『牡羊座』のカードで残りは四十七枚」
「……」
本当に、果てしない……。
普通に一日一枚と考えても一カ月は軽く超える。俺がちょっとした好奇心で行動したのが悪かったとは言え……とついさっきまでの自分の行動を恥じたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……そういえば、自己紹介がまだだったな」
「……それは必要?」
「お互いを知ることは、必要な事だ」
「…………」
これからの事を考えるとお互いの名前すら知らないのは問題だろう。
「俺は
「……私は、
どうやら少女はあまり自分の事を話すのが好きではないらしく、またもやボソッと呟くように名前だけ答えた。
未だに警戒心は解いてくれていない様だが『名前』だけでも知られたのだから良しとしよう。
「なるほど『ソラ』……か」
「……何?」
「いや、何でもない」
「……」
そのまま俺たちは、元々俺のいた場所まで戻ろうと歩いたが、元にいた場所に戻らないと俺の場合は帰り道が分からなくなる。
「ところで……、さっき
「うん」
「あまり、探す方法とか分からないが……。もし、その『カード』の星座は由来によって案外すぐに見つかる……という事はあるのか?」
「……それ……はある」
「! そうかっ!」
ただ、思いついたことを言っただけだがそうだとすれば、早く終わる可能性が出て来るのだが、そんな事を予想していなかったので、俺は正直驚いた。
「……この牡羊座のカード」
そう言って少女は、先ほど手渡したカードを見せた。
「牡羊座はギリシア神話によると継母の悪だくみによって双子の兄と妹が生贄にされそうになった時に二人を乗せて逃げたのが金の皮を持つ『羊』だったらしい……」
「……そうか。そんな由来があったのか……」
正直、そんな意外に人間くさい由来があることは知らなかった。
俺自身、生まれた月日で占いに使われる星座が決まっていることは知っていたが、その『星座』の由来など詳しいことは、何も知らないに等しい。
「さっきの場所は、だだっ広い草原だった」
「じゃあ、野を駆ける羊……。二人を乗せて走ったことを思い出したのかもな……」
さっき見た、金色の羊は何かを探している様に見えた。もしかすると、この野原を見てその二人を乗せて走ったことを思い出していたのか……。
それとも何か別のことを思い出していたのかも知れないが、それはその当事者にしか分からない。
でも、持ち主に返すことが出来たのだから、今回はよかったのだろう。
「…………」
この時になってようやく空の視線に気がついた。
「なんだ?」
「いえ、男性が……そんなことを言うとは……」
「……悪いのか?」
「別に……悪いとは……」
「そうか……」
「はい」
そう言いながら俺たちは、サクサクと音を立てながら野原をゆっくりと歩いていった。
「でも……まだ一枚」
「はぁ、俺としては、早く終わらせたいところだが、先は長いなぁ」
「…………」
「うっ……」
どうやら、この『空さん』は口よりも、目でモノを語るタイプの様だ……。
「……分かっている。ちゃんと全部探す」
「分かっているなら……」
これからが大変だ……と思いながら、空を見上げた。
「…………」
空には大きな『スーパームーン』。そして、その『スーパームーン』を演出するように星たちが瞬いている。
「はぁ……」
――こうして、俺と空の星を紡ぐ物語が始まったのだった。
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