第2話


「確か……」


 辺りをキョロキョロと見渡しながらとりあえずさっき聞こえてきた足音の方をゆっくりと進んだ。


 すると…………。


「~~」


「ん?」


 正直、当てずっぽで聞こえてきた足音を頼りに歩いていたのだが、ふいに聞こえた声に気が付いた。


「…………」


 ただこの時実は内心、熊とかじゃなくてよかった……と安堵していた。一応、友人から「動物はいないよ」と聞かされていても、やはり不安だったのだ。

 しかし、その声に少し安心して、とりあえず声が聞こえる方に向かってさらに歩みを進めて行き、たどり着いた先にいたのは……。


「女の……子?」


 一人の少女だった……。


 その髪は夜空の様に綺麗な黒く、腰までまっすぐ伸びている。しかし、服装は髪の色に反して真っ白のワンピース。

 季節の変わり目を意識してかワンピースの上にはベージュのストールのようなモノを羽織はおっている。


「~~」


 しかし、一応遠目とは言え、俺から見える距離では『服装』と大体の『容姿』くらいしか分からない。それはつまり、彼女が何を言っているのか……正直、分からない。

 でも、この状況で彼女の独り言を聞き取れる人がいたならば、その人はかなり耳がいい……というか周りが引くくらいに良すぎる。


 もう少し近づけば……なんて思ったのが間違いだった様だ。


「あっ……!」


 この時少しでも欲が出てしまったのが悪かったらしく、少し体勢を崩してしまった結果、俺は草の茂みが揺れてそのまま少女の前に出てしまった――。


「えっ?」

「……あっ」


「……」

「……」


 そして、さきほどまで見ていた少女とお互い目が合ったまま……。文字通り『お見合い』の状態になり、思わずお互い固まってしまった……。


 ――――通常、このような状況になってしまった場合。何かしら一言発はっせればいいのだが……なんにせよとりあえず『無言』が一番まずい。

 だが、自慢じゃないが俺は、あまり女性と話すのは得意じゃない……というか苦手だ。


 それ以上に最後に女子とまともに会話をしたのは……いつだったろう……と言えるくらい女子と会話をした覚えがない。

 だから要するに、この状況をどうやって切り抜ければいいのか……それすら分からない。


「……」


 ――さて、どうするのが正解だろうか。


 適当に「偶然通りました……」と言う……いや、こんな前のめりになっている状況でそんな事を言っても全く説得力がない。

 じゃあ、素直に説明すればいいのだろうか。いや、そんな事を言ったら変質者だと思われかねない……とそんな自問自答を繰り返している俺を少女はずっと無表情だ。


 しかし、その視線は俺の方をずっと向けている。


 本当に情けない事に、自問自答を繰り返しているだけで結局、何も解決策が思いつかず、固まっているだけしか出来ない。


 でも、その長い沈黙はすぐに終わりを告げられる事になる――。

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