【KAC8】三周年


 前回までのあらすじ!


 イオンシネマでジョーカーとのデュエルに勝利しスタンプをゲットしたわたしは、続いてスターバックスでの注文詠唱バトルとヴィレッジヴァンガードでのギリセーフラインを狙うギリギリサブカルおしゃれバトルに辛くも勝利し、見事スタンプカードを満タンにしたのだった! これであとは2Fイオンホールの特設イベントに向かうだけだ!


「沼田さん。普通に前回までのあらすじで嘘を言い過ぎですわよ。あなた、イオンシネマのトイレで排便したあとは、劇場版んティーんンターのあいだ爆睡していただけじゃありませんの。なんの話かと思って読み返してしまいmあしたわ」

 そこは嘘ではなく書き飛ばしのテクニックと言ってください。いや、当初の予定では順当にデュエルを勝ち進んでスタンプを集めていくはずだったんだけど、なにしろお題をクリアしなければならないので、予定通りにはいかないのが人生ってものよ。

 というわけで、スタンプはもう集め終わったと言ったら集め終わったので、集め終わったっていうことで、その続きから仕切り直しです!

「ふ~、まさかちょっと休憩しようとお茶しに寄ったスターバックスで、店員のイケてるお兄さんと注文バトルする羽目になるとは思わなかったよ」

「ええ、危ないところでしたけれど、すんでのところで沼田さんのトールホワイトも鏑ベアドリストレッとショットエクストラホイップだーくもかチップクリームフラペチーノが綺麗にキマッてなんとかなりましたわね」

 いや、全然言えてないから。ていうか、なんなのその斬新な噛みかたは。IME弱すぎじゃない? まあいいか……。

「その後、なんとなく立ち寄ったヴィレッジヴァンガードでは企画ものAVみたいなオタクどもへの媚びがキッツイおばゲフンお姉さんにギリギリサブカルおしゃれバトルを挑まれ……」

「なかなかの強敵でしたが、ヴィレヴァンの分際で(ゲフン)値段帯を完全に間違えていたところに勝機がありましたわね」

「ヴィレヴァンで5桁はちょっとね~、同じ値段出すならパンクなノリでも普通にミルクとかヴィヴィアンウエストウッドとか買うもんね」

 しかも、イスカンダール真美はマジモンのお嬢様で性格はさて置くとして(さて置くとして)顔はちょっとバタ臭い感じではあるけれど普通に可愛いし、ちょっと歳のわりに金満な感じが鼻につくとはいえナチュラルなお嬢様ファッションだから、素のままでもオタクどもにはウケるタイプなんだよね。媚びたおばゲフンお姉さんではそうそう勝てまい。まあ、本人はねっとり全身舐め回してきそうなタイプのガチレズなんだけど。「なにかおっしゃいまsいたか? 沼田さん」いえ、まったく。ていうか、そういう切れ味が重要なところで噛むのがイスカンダール真美まじイスカンダール真美だよ。

「で、満タンになったスタンプカードがこちらになります」

「なんだかお料理番組みたいなノリですわね」

 うむ。なにしろ尺が限られているので、時間の掛かりそうなところは事前の仕込みが大事なわけですよ。

「よし。じゃあ早速、特設イベント会場に向かうぞ~」と、勢い込んで2Fイオンホールに向かったら、入り口の係員のお兄さんに「あ、すいません。これは違いますね」と、言われてしまう。え? なに? 違うとか言われても困るんだけど。

「ここは開店5000日祭記念イベントの特設会場なんですよ」

「ん? はい。だからこれ、開店5000日祭記念イベントのスタンプカードですけど」

「これはアレですね。開店三周年記念祭のほうのスタンプカードですね」

 は? なに、開店5000日祭と開店三周年祭のふたつをやってるの? え? でも5000日って全然三周年じゃないよね? 算数が合ってなくない?

「はい。ですから、そのスタンプカードで入れるイベントはうちじゃなくてですね……」

 と、お兄さんがなにかを説明しようとしたところで、横からキリフダが(そういえば君いたね)(いたんだよ、ずっと)「こ……これは、まさか!!」と、声(イケボ)をあげる。

「しまった! どうやら桐生志乃が待つ三周年記念イベントの会場は、イオンモール高崎ではなくイオンコート高崎駅前のほうだ!!」

 たしかに、よくよく見てみると、わたしたちが持っているスタンプカードにはでかでかと「三周年記念!!」と「イオンコート高崎駅前」という風に書かれている。

 ええ……、なにその罠みたいなの。「イオン」で「高崎」といえば、イオンモール高崎のことだって思うじゃん。ちなみにイオンコート高崎駅前は2016年オープンなので、今年で開店三周年なのだ。

「え、でも高崎駅前といえば高島屋があるあたりですわよね?」と、イスカンダール真美が首をひねる。「あんなところに、イオンなんかありましたかしら?」

「ああ、そうだね。イオンコート高崎駅前って言っても馴染みがないかも。要はアレだよ。むかしビブレが入ってたとこ」

 と、わたしがイスカンダール真美に説明していると、横からキリフダがまたイケボで「左様……」とか嘴を挟んでくる。左様って……。

「旧ビブレ跡地……いまの高崎オーパが次の戦場だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る