【KAC2】二番目
前回までのあらすじ!
真面目を拗らせ過ぎててギャグ漫画体質の領域にまで足を突っ込んでいる系のスーパー箱入りお嬢様である志乃ちゃんが珍しく待ち合わせに遅れていると思ったら左肩にまんまるいフクロウを乗せてやってきた! しかもこいつ、人の言葉を(イケボで)喋る! キリフダと名乗ったフクロウに世界を救うために力を貸してほしいと頼まれたわたしたちの命運や如何に!?
「契約は成った。少女たちよ、世界を救うために我に力を貸してほしい」
キリフダことCV:大塚明夫って感じのイケボで喋るフクロウ(フクロウだよね?)が、しれっとそこから話を再開するので、どうやら前回のそこンところから仕切り直しってことらしいんだけど、いや、わたしは別にいいんだけど、それだとマジで前回は志乃ちゃんが肩にフクロウを乗せて登場した以外にロクになにも起こってないことになってしまうけどいいのか? いくらなんでも、そろそろ話が動き出してもらいたいところではある。
「あのさぁ。いきなり現れて世界を救うために力を貸してほしいって、自分で言ってて説明不足だな~とか思ったりしない? 人に協力を求めたいならもうちょっとなんかいろいろとあると思うんだけど」
わたしもわたしでこれで意外と素直なところがあるので、素直に前回と同じ台詞をもう一度言う。これで意外と素直なところもあるんだよ。本当だよ?
「そうだな、どこから説明したものか」
そう言って、キリフダはスッと目を細めると、バサッと翼を広げて志乃ちゃんの左肩からわたしの右肩へと飛んできた。お、いちおう前回とは違う展開になったぞ? そんで、やっぱ空を飛ぶ生き物なので、見た目の大きさのわりにはわりと軽い。ていうか、すげーフクフクとまんまるい感じだけど、いちおう飛べるんだ?
「我は魔界からやってきた」
「魔界」
唐突に出てきたやっつけ仕事てきフレーズを、わたしはただ復唱する。魔界か。まあいいか、別に。わたしもこれで意外と素直なところがあるので。
「本来、我らの魔界とこの世界は相互に不干渉なのだが、急進派の悪いやつらがこの世界を狙って全面戦争を引き起こそうと、悪いことを企んでいるのだ」
「悪いやつら」
なんだよ悪いやつらって。せめてもうちょっとなんか詰めたほうがよかったんじゃないの? 小学生かよ。
「全面戦争となれば、この世界はもとより、魔界にも犠牲は避けられまい。我ら穏健派は、やつらの企みを阻止して、魔界とこの世界の全面戦争を回避したいのだ」
「オッケー。まあだいたい事情は分かったけど、つっこみどころ満載だけどいちいちつっこんでたらつっこんでるだけでまた話が終わっちゃうから分かったことにするけど、そんなこの世界に全面戦争を仕掛けようなんていう過激な悪いやつら相手に、わたしたちがなにをすればいいわけ?」
とにかく話を前に進めようと、わたしがそう訊くと、キリフダは「よくぞ訊いてくれた」とばかりに鷹揚に(フクロウだけど)頷いて言う。
「魔界はこの世界とは別の法則に支配されている。やつらにはこの世界の科学の力は通用しない。別の力が必要なのだ」
なるほど。して、その別の力とは。
「魔法だ」
「魔法」
まあ、魔界なんだから魔てきななにかだろうなとは思うけど。そうか、魔法か。なるほどね? と、そこでキリフダはまた志乃ちゃんのほうへと視線を向ける。
「桐生志乃。君の潜在的な魔力はこの世界で一番つよい。魔界とこの世界の全面戦争を食い止めるため、ひいては、この世界を救うため、我に力を貸してほしい」
「わ、わたしですか?」
と言って、表情に困惑を滲ませる志乃ちゃんの両肩を唐突に巨大な猛禽の爪がガッシ! と掴んだ!!
「え?」と、志乃ちゃんが呟く。
「は!?」と、わたしが叫ぶ!!
「お前は……ジョーカー!!」と、キリフダがイケボで吼える!!
志乃ちゃんの肩を足の爪でガシッ! と掴んだのはキリフダをそのままのアスペクト比で拡大したみたいなフクフクとまんまるい巨大なフクロウで、でも目がキリフダよりもシャキーンとつりあがっていて、分かりやすく悪者っぽい。さてはお前が悪いやつだな!!
「おのれジョーカー! 不意打ちとは卑怯な!」
「ふはは! 先手必勝! この娘はもらっていくぞ!!」
キリフダにジョーカーと呼ばれたクソデカいフクロウは高らかにそう言い捨てると、大きな翼をバッサバッサと羽ばたかせてイオンモール高崎のほうへと飛び去っていく。もちろん、志乃ちゃんの肩をガッシと鷲掴み(フクロウだけど)したままで。
「ぬ……沼田さん!!」
「は? え? 志乃ちゃん!?」
は?? 志乃ちゃん、なんかいきなり現れたわけわからん巨大なフクロウにいきなり連れ去られちゃったんだが? え? なんぼなんでもいきなり過ぎない? っていうか、ギャグ漫画体質ですまなくない? リアルに連れ去られちゃってんだけど。さすがにそれは普通に困りますよ。今日は志乃ちゃんとイオンモール高崎で春休みのお出掛け用の服を買う予定だったんだから。ザラとギャップでセール品を物色してウィゴーとフランフランを冷やかしてヴィレッジヴァンガードでポップでキッチュなオシャレ雑貨とか買ったりするんだから。え? こういうのってどうすればいいんだっけ? 警察? 警察とかでなんとかなる? なんて説明するの? 友達がクソデカいフクロウにさらわれましたって? は? マジで? ウケる(ウケている場合ではない)
「おのれジョーカーめ! 我とリンクする前の無防備なキャスターを狙うとは、なんと卑劣な……!!」
「いや、普通に考えてそりゃ無防備なところを狙うでしょ。どうすんのよ」
そんな重要な子に協力を要請するのに、なんでなんの準備もなしにヒョコヒョコとひとりでやって来てんの。もっと戦力をぶっこめよ。本気で全面戦争止める気あんのかよお前。
「こうなったら取り戻しにいくしかない」
「でもさ、志乃ちゃんが一番魔力? つよいんでしょ? そこをソッコーで敵におさえられちゃって、君ひとりでどうするわけ?」
わたしが白けた半眼で訪ねると、キリフダは「大丈夫だ。君の魔力もこの世界で二番目くらいにはつよい」と言う。
二番目くらいって。
いや、まあ別にいいんだけどさ。打つ手ナシよりはだいぶマシだから、二番目でも二番目くらいでもわたしは別にいいんだけどさ。本気でそう思ってるならちゃんとわたしの目を見て言えよ。なんでちょっと目を逸らしてんだよ。まあ、志乃ちゃんを取り戻すのはやるしかないからやるけどさぁ。
「沼田未希。我もサポートするゆえ、桐生志乃を救うために力を貸してくれ」
ええ、もちろんやりますとも。やりますともさ。世界とかどうでもいいけど、志乃ちゃんは友達だしね。
「でまあ、力を貸すのはやぶさかではないんだけど、キリフダは志乃ちゃんが連れ去られた先に、なにか心当たりはあるの?」
なにしろジョーカー? はビューッ! と飛び去ってしまったので、闇雲に探し回ってもなかなか見つけるのは難しそうだ。今のままでは、だいたいの方角くらいしか分からない。
「無論だ。ジョーカーは桐生志乃を悪いやつらの総本山に連れ帰ったに違いない」
「で、その総本山っていうのはどこなの?」
「うん? どこもなにも、目の前に見えているだろう。あれこそが悪の総本山だ」
「え、あれこそがって言われてもあれってさ」
イオンモール高崎じゃん。
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