【KAC2】さよならしよう
学校の朝礼などで男女別に背の順で整列するとき、わたしはいつも前から二番目だった。幼稚園からずっとだ。なにげにこれってすごくない? 地味だけど。こんなのわたしだけだろうって思ってたんだけど、中学でおなじクラスになった
それはもしかしたら、本人たち以外気づいていない事実だったかもしれない。だって男女混合とか出席番号順とかでならぶときは二番目じゃないし。男女別に背の順でならぶときだけの話だもの。
前から二番目のわたしと、うしろから二番目の奈子。地味にすごいよね! と、妙な連帯感が生まれたりして。いつしかわたしたちは親友になった。
おとなになって、さすがに背の順でならぶような機会はなくなったけど、わたしたちは変わらず親友だった。
そして、ずっと二番目仲間だった奈子が、人生で『一番』になる日がやってきた。彼女が就職した会社の先輩である
人好さんの実家はものすごいお金持ちなんだけど、なかでも一代で財を成したというお
すらりと背の高い奈子はモデルのようにとてもきれいで、花嫁らしくとてもしあわせそうだった。
うらやましいと思った。もしかしたら出会ってはじめて、奈子を
でもなにより、親友の結婚式でそんないじけたことを考えてしまう自分がいやだった。だからもう、やめよう。今度こそ、おわりにしよう。おわりにしなきゃ……と思った。そうしなければきっと、じわじわと心の内側から腐っていく。
だってほんとうは、ずっとまえから知っていた。
――女房とはうまくいってないんだ、なんて。
――夫婦仲なんかとっくに冷えきってる、なんて。
――愛してるのはおまえだけ、なんて。
――もう少し子どもがおおきくなったら離婚する、なんて。
そんなのぜんぶ、ぜんぶウソだって、わたしはとっくに知っていた。ただ、目をつぶって、耳をふさいで、やりすごしてきただけだ。
……このさい、なにもかも奥さんにバラしてやろうか。
きっと、その瞬間はスッキリする。だけど、どうだろう。それでわたしになにが残るだろう。むなしさしか返ってこないんじゃないだろうか。いや、逆に彼や奥さん、子どもたちからうらまれるだけかも。
……なんか、冷静だなわたし。そう思ってちょっと笑ってしまった。まあ、いいや。とにかく別れよう。きれいサッパリさよならしよう。
ああ、そのまえに友人代表のスピーチだ。『二番目仲間』だった奈子とわたしの話をしよう。きれいだよ、奈子。ちゃんと人好さんとふたりでしあわせになるんだよ。
わたしもいつか、誰かの『一番』になれるようにがんばるよ。
(おわり)
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