第2話
ある雨の激しく降る夕方、あと5分で仕事も終わるかという時だった。
勢いよくドアを開けてずぶ濡れの男子学生が入って来たのだ。
(もう! 誰?ギリギリに来て!)
ちょっとイライラした気持ちを抑えながら寄子は学生に話しかけた。
「こんにちは、何の用件ですか?」
「すみません、遅くなりましたが提出書類、、」と言って寄子に書類を差し出したのは、大学院生で主に多足類、節足動物などを専攻している森 育三郎だった。
(あまり見ない顔ね、、)
と思いつつ、「あ、お預かりします」と言って手を出した瞬間、
一瞬だが、寄子の指が育三郎の指に触れたのだ。
その瞬間、ハッと目が合い、寄子の心臓はなぜかドラムのように高鳴った。
「ハッ、あっごめんなさい」
寄子は、自分の顔がカーッと赤くなるのがわかった。自分が激しく同様したことに戸惑い、顔も上げることも出来なくなったその時、
「ひゃくあし?ひゃくあしさん?」
育三郎は寄子の名札に目をやり、突然こう言った。
「あ、珍しい名前でしょう?
百足と書いて ももたり って読みます。」
「ももたりさん?っていうんですね! 僕、多足類のレポートとかも書いてるんで、なんかビックリしました。へぇー!そんな名字あるんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます